年金未加入で老後を迎えた高齢者はどう生活しているのか？制度と実例から探る現実

日本の公的年金制度は老後の生活を支える柱ですが、何らかの事情で年金を納めてこなかった高齢者も一定数存在します。では、年金が一切支給されない高齢者が、頼る家族もいない場合、どのように生活を維持しているのでしょうか？本記事では、年金未加入の高齢者の生活実態と利用できる公的制度を詳しく解説します。

▼年金を受給できない人の背景

年金が支給されない主な理由には、「保険料未納期間が長すぎた」「全く未加入だった」「受給資格を満たせなかった」などがあります。現在の制度では原則10年以上の加入期間がなければ老齢基礎年金を受け取ることはできません。

たとえば、若い頃から非正規や無職状態が続いた人や、自己都合で加入しなかった人などが該当します。特に昭和30～40年代生まれの方にはこのようなケースが見られます。

年金を受け取れず、頼る家族も資産もない場合、多くの高齢者は生活保護を利用して生活しています。生活保護では、住居費・食費・医療費など最低限の生活を保障してもらえます。

生活保護の高齢受給者は全国で増加傾向にあり、令和時点では約半数が65歳以上となっています。年金を受給していない、あるいは受給額が極端に少ない高齢者にとって、事実上のセーフティネットとなっているのです。

生活保護を受けている高齢者の多くは、公営住宅や民間の安価なアパートで生活しているほか、支援付き住宅やグループホーム、NPOが運営する住居支援施設などを活用するケースもあります。

例えば、生活困窮者向け住宅支援を行う団体によっては、「保証人不要・家賃一部補助あり」の部屋が提供されるなど、高齢者の孤立を防ぐための仕組みも整備されています。

年金ゼロ・単身高齢者でも、地域包括支援センターを通じて様々な支援が受けられます。たとえば、見守りサービス、買い物支援、安否確認、健康管理のサポートなどが行われています。

また、民間のボランティア団体や社会福祉協議会などが、高齢者向けの宅食サービスや交流イベントを提供するなど、社会的孤立のリスクを和らげる活動も盛んです。

実際に60代で年金未加入だった女性Aさんは、身体を壊し働けなくなったことをきっかけに生活保護を申請しました。住んでいた賃貸を退去し、地域の支援を通じて保証人不要の支援住宅に入居。

現在は生活保護費での暮らしながら、週1回の訪問介護サービスを利用し、自立に近い形で生活を継続しています。Aさんは「家族がいなくても、制度と人に支えられて生きていける」と語っています。

年金を支払わずに老後を迎えると、経済的な困窮リスクが高まるのは事実です。しかし、日本には生活保護をはじめとした社会保障制度が整備されており、身寄りのない高齢者でも一定の生活は維持できます。

老後に向けて早めの準備が望ましい一方、万が一の場合も「誰にも頼れないから終わり」ではありません。必要な制度を知り、適切に相談・申請することで支援を受ける道は開かれています。