長年勤務していたにもかかわらず、雇用保険に加入していなかったことが原因で、育児休業給付金が受け取れないという事例が起こることがあります。これは働く側にとって非常にショックな出来事であり、生活にも大きな影響を与えます。本記事では、雇用保険の加入条件や、事業主の責任、法的対応の可能性について、わかりやすく解説します。
雇用保険加入の基本条件とは
雇用保険の加入対象者は、原則として週20時間以上の所定労働時間がある労働者です。これに加え、31日以上の雇用見込みがあることも条件です。
今回のように「月11日勤務・1日7.5時間」であれば、年間での時間換算が約990時間、週平均にすると19時間となり、数字上では20時間に届きません。しかし、実態として20時間以上働いていた場合や、契約上の記載と実労働時間に差異がある場合には、加入対象と見なされる可能性もあります。
実態に基づく加入判断もある
労働契約書や就業規則だけでなく、タイムカード、給与明細、シフト表などの記録をもとに実際の勤務状況を証明できれば、後から雇用保険への「遡及加入(さかのぼり加入)」が認められることもあります。
実例として、タイムカードの記録で週20時間以上勤務していたことが明らかになり、労働基準監督署への相談後、事業主が遡及加入を認めたケースも報告されています。
事業主の責任は問えるのか?
事業主には、従業員が雇用保険の加入条件を満たした時点で速やかに保険加入手続きを行う義務があります。加入漏れは明確な法令違反となり、厚生労働省から是正指導を受ける対象にもなりえます。
また、従業員から保険料を天引きしていた場合には、その分を納付していないことも問題であり、悪質な場合は行政処分や損害賠償請求の対象にもなります。
対応策①:ハローワークに相談する
勤務実態が週20時間を超えていた可能性がある場合は、管轄のハローワークに相談しましょう。証拠書類を提示することで、遡って保険加入が認められる可能性があります。
必要となる書類には次のようなものがあります。
- 勤務シフトやタイムカード
- 給与明細
- 雇用契約書(できれば複数年分)
- 賃金台帳(コピー可)
対応策②:労働基準監督署や社労士に相談
雇用保険の加入義務違反は、労働者の権利侵害にあたる場合もあります。労働基準監督署や社会保険労務士(社労士)への相談を通じて、法的な対応も含めた解決の糸口が得られる可能性があります。
また、弁護士に相談し、損害賠償や補償の交渉を行う選択肢も視野に入れておくべきでしょう。
対応策③:会社に正式な申し入れを行う
証拠を揃えた上で、会社に文書で加入漏れの経緯説明と、育児休業給付金が受けられなかった損害の補填を申し入れることも可能です。
この際には、時系列に沿った事実経過と、どのような補償を求めるかを明確に書き、会社に誠意ある対応を促しましょう。
まとめ:加入漏れは泣き寝入りしないことが大切
雇用保険の加入漏れは、本人に責任がないことがほとんどです。勤務実態と証拠をもとに、まずはハローワークや社労士に相談することで、解決の糸口が見えてきます。
育児休業給付金は大切な生活支援制度。だからこそ、「おかしい」と感じたら声を上げ、正当な権利を取り戻す行動が求められます。
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