個人事業主が従業員を雇う際、避けて通れないのが「労働保険」に関する手続きです。特に「保険関係成立届」や「雇用保険適用事業所設置届」は、タイミングや対象となる条件をしっかり把握する必要があります。この記事では、従業員が雇用保険の対象でないケースに焦点を当てつつ、必要な手続きやポイントを解説します。
労働保険とは何か?基本の仕組みをおさらい
労働保険とは、「労災保険」と「雇用保険」の総称です。労働者を一人でも雇用した時点で、原則として労災保険の適用事業所となり、労働基準監督署への届け出が必要です。
一方、雇用保険は週20時間以上勤務し、かつ31日以上雇用が見込まれる労働者を雇った場合に適用されます。そのため、すべての従業員が雇用保険の対象とは限りません。
保険関係成立届の提出先と内容
労災保険の加入手続きとして必要なのが「労働保険 保険関係成立届」です。これは労働基準監督署に提出し、事業所が労災保険の適用事業所であることを証明します。
この届出には、労働者を雇い入れた日や事業内容、事業主情報などを記載します。従業員が雇用保険非該当者であっても、労災保険のためにこの届出は必ず必要になります。
雇用保険の適用事業所設置届はいつ必要?
「雇用保険適用事業所設置届」は、雇用保険の対象となる労働者(週20時間以上・31日以上の雇用見込み)がいる場合に、ハローワークへ提出します。
現在、該当者がいない場合は提出の必要はありませんが、対象となる従業員を新たに雇い入れたタイミングで提出すれば問題ありません。数か月後に対象者が発生した場合も、その時点での提出で大丈夫です。
将来的に雇用保険対象者が発生した場合の流れ
たとえば、パートやアルバイトを雇っていたが全員週20時間未満勤務だったケースでも、後にフルタイム労働者を雇った場合は、以下の手順を取ります。
- 該当労働者の雇用契約締結
- ハローワークへ「雇用保険適用事業所設置届」の提出
- 対象労働者の「雇用保険被保険者資格取得届」の提出
このとき、すでに労災保険の「保険関係成立届」を提出してあれば、再度の提出は不要です。
手続きをスムーズにするためのポイント
開業後すぐにすべての労働保険手続きを完了させる必要はありませんが、以下のような準備をしておくと安心です。
- 開業時にまず労働基準監督署に相談:事業内容や従業員の就労条件を確認
- 人事の変動に注意:勤務時間や契約形態の変更があれば、都度保険の要件を見直す
- 書類は控えを保管:提出書類のコピーや控えを残しておくことで、後の手続きが円滑に
まとめ:状況に応じた正しい届出が事業主の責任
労働保険に関する手続きは、一見複雑に見えますが、「誰をいつ雇ったか」に注目すれば必要な届け出も明確になります。従業員に雇用保険の加入要件を満たす人がいない場合は、まず「保険関係成立届」のみを提出し、該当者が現れた段階で「適用事業所設置届」を提出すれば問題ありません。
労務管理の第一歩として、届出のタイミングと内容を正しく理解しておくことが、事業を円滑に進める鍵となります。
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