長年結婚生活を送りながら働き方を変えてきた方にとって、将来受け取れる年金額は大きな関心ごとのひとつです。とくに、離婚や配偶者の死をきっかけに「年金分割」や「遺族年金」の制度に触れる場面では、自分の年金受給額がどう変わるのか不安を感じる人も多いでしょう。本記事では、扶養内・自営業・厚生年金加入歴などの状況別に、それぞれの制度のポイントを解説します。
年金制度の基本:基礎年金と厚生年金
日本の公的年金制度は2階建て構造となっており、国民年金(基礎年金)が1階部分、厚生年金が2階部分です。すべての人が国民年金に加入し、会社員や公務員などの厚生年金加入者は2階建てで上乗せされます。
扶養内で働いていた期間や自営業で国民年金を納めていた期間は、厚生年金に加入していないため、将来的な年金額は「基礎年金のみ」となります。一方、会社員として厚生年金に加入していた期間があれば、その分の加算が発生します。
離婚時に使える「年金分割」制度とは
離婚時に活用できるのが「年金分割」制度です。これは、婚姻期間中の厚生年金の記録を夫婦で分割する仕組みで、主に配偶者が会社員として厚生年金に加入していたケースで有効です。
年金分割には2種類あり、合意分割(話し合いで割合を決める)と、3号分割(専業主婦・主夫が自動的に2分の1を受け取れる)が存在します。友人が専業主婦ではなく国民年金を納めていた場合でも、結婚中の配偶者の厚生年金記録は対象となり、一定の年金分割を受ける権利があります。
配偶者死亡時に受け取れる「遺族年金」
もう一つ重要なのが、配偶者が死亡した場合に支給される「遺族年金」です。これは、亡くなった方の保険料納付状況や年金受給資格に応じて、遺族に対して支払われる公的年金です。
会社員だった夫が死亡した場合、その年金記録に基づいて遺族厚生年金が支払われます。ただし、受給者側の年金(老齢基礎年金など)との調整があるため、受け取れる金額は一律ではありません。
また、遺族年金は基本的に配偶者の収入に依存するため、自分が扶養内だったか、自営業だったか、専業主婦だったかは、遺族年金の金額に大きな影響を及ぼしません。
年金受給額の比較:専業主婦 vs 自営業 vs 会社員
専業主婦は第3号被保険者として、保険料の自己負担なしで国民年金を受給できます。一方、自営業者(第1号被保険者)は国民年金を自分で納める必要がありますが、受給額は専業主婦と同水準になります。
つまり、「もらえる金額が専業主婦より少ない」ということは基本的にはありません。ただし、厚生年金の加入期間が短い場合(今回の例では4年)では、会社員経験による上乗せはわずかで、結果的に受給額が少なく見えることがあります。
将来に向けて知っておきたい手続きとポイント
年金分割や遺族年金の請求には、それぞれ手続きと期限があります。離婚後は2年以内に「年金分割請求」、死亡後は速やかに「遺族年金請求書」の提出が必要です。
不安がある場合は、日本年金機構の年金事務所にて相談を受け付けています。本人確認書類・年金手帳・婚姻期間の証明などが必要になるため、準備も大切です。
まとめ:年金制度は「過去の記録」と「制度理解」がカギ
友人が感じている「専業主婦より年金が少ないかも」という不安は、事実ではない可能性が高いです。扶養内や自営業だった期間があっても、国民年金はしっかりと加算され、厚生年金記録も年金分割で考慮されます。
年金制度のしくみを理解し、必要な手続きを行うことで、将来に向けて不安を減らすことができます。状況に応じて年金事務所や専門家に相談しながら、安心できる老後設計を進めていきましょう。
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