日本の年金制度は長らく「支え合い」の原則を土台に構築されてきました。しかし、近年では制度の持続可能性や公平性に関する議論が活発化し、「厚生年金と国民年金の相互扶助は是か非か?」といった疑問も広がっています。本記事では、現行制度の仕組みと問題点、そして年金改革の方向性についてわかりやすく解説します。
日本の年金制度は「2階建て構造」
日本の公的年金制度は大きく分けて、以下の2階建て構造となっています。
- 1階部分:国民年金(基礎年金) – 全ての20歳以上60歳未満の国民が対象
- 2階部分:厚生年金 – 主に会社員や公務員が加入
この仕組みにより、すべての人が共通の基礎年金を受け取れる一方で、給与に応じて厚生年金が上乗せされます。
第3号被保険者制度がもたらす「相互扶助」の現状
厚生年金制度のなかでも特に注目されているのが第3号被保険者制度です。これは厚生年金加入者の配偶者(主に専業主婦など)が、保険料負担なしで年金制度に加入できる制度です。
つまり、実質的には会社員や公務員など第2号被保険者が、第3号の年金保険料を支えている構造です。この仕組みは「相互扶助」の一環として理解されてきましたが、働く人に偏った負担構造として不公平感を抱く声も少なくありません。
厚生年金と国民年金の財政は実質一体化している
2009年の制度改正により、厚生年金と国民年金は財政的に一本化され、「基礎年金勘定」で統合管理されています。これにより、厚生年金加入者が拠出する保険料の一部が、国民年金の財源にも充てられているのが現状です。
たとえば、自営業者や無職の人が払う保険料は満額でも月額約1.6万円ですが、厚生年金加入者はこれをはるかに超える保険料を給与から天引きされています。この差が、結果として制度間での扶助構造を作り出しています。
年金改革の焦点:制度の統一と負担の公平化
現在議論されている年金改革の大きな方向性には、以下のような論点があります。
- 厚生年金の適用拡大(パート・非正規労働者への拡大)
- 第3号被保険者制度の見直し
- 厚生年金と国民年金の制度一本化
これらはすべて、制度間の負担のアンバランスを解消し、「公平な年金制度」を目指すものです。とくに第3号制度の見直しは、厚生年金加入者の負担軽減と同時に、保険料を払っている人の納得感の向上にもつながります。
相互扶助は不要?それとも必要?
「相互扶助」が年金制度の根幹を成してきたのは事実ですが、少子高齢化や多様な働き方の広がりによって、従来の形では限界があるとも言えます。
今後は自助・共助・公助のバランスを再設計しつつ、「負担と給付の見える化」「納得感のある制度設計」が求められています。
まとめ:公平性と持続可能性の両立へ
厚生年金と国民年金の相互扶助は、制度のセーフティネットとして重要な役割を果たしてきました。しかし、その持続性や公平性に疑問が出てきている今、制度の見直しは避けられない課題です。
年金改革の本質は、制度を分断することではなく、「誰もが納得し、安心して老後を迎えられる」社会を築くための前向きなステップだと言えるでしょう。
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