グローバルなビジネス環境において、自社製品を海外の現地法人で製造し、再び本国に輸入する「逆輸入」は珍しくありません。しかし、政治情勢や貿易政策の変化によって、関税制度に思わぬ影響を受けることがあります。特にトランプ前大統領の関税政策は多国籍企業に大きな波紋を広げました。本記事では、米国の日本現地法人が製造した製品を逆輸入する場合、関税はどうなるのか、実務上の扱いや留意点を詳しく解説します。
逆輸入の関税扱いとは?
一般に、製品が米国外で製造されて米国へ輸入される場合、原産地が米国外と見なされます。たとえその製造元が米国企業の現地法人であっても、関税の課税対象になります。
つまり、日本の米国現地法人が日本で製造した製品を米国へ輸出しても、税関上は「日本からの輸入」として扱われます。このため、関税率や通商協定の有無に応じて関税が課される可能性があるのです。
トランプ政権下の関税政策と影響
トランプ政権は2018年以降、中国を中心とした外国製品に対して追加関税を課す政策を展開しましたが、それは中国だけに限られたわけではありません。日本やEU製品に対しても、自動車や鉄鋼など一部品目には追加関税措置の対象となるリスクがありました。
たとえば、米国企業が日本法人で製造した部品を本国へ輸入する場合、それがセクション232(国家安全保障)やセクション301(知的財産権侵害)の対象となる品目に該当すると、10〜25%以上の追加関税が発生するケースもありました。
現地法人製造品は「米国産」ではない
重要なポイントとして、日本現地法人で製造された製品は、関税上「日本産」とされ、米国産とは見なされません。企業グループ内の取引であっても、関税の扱いは原産地とHSコードに基づいて判断されるのです。
たとえば「メイド・イン・ジャパン」のラベルがついた機械部品を、米国に本社を持つ企業が輸入する場合、その法人が日本法人であっても米国では輸入申告が必要となります。
原産地証明と通商協定の活用
関税の軽減や免除を受けるためには、原産地証明書(Certificate of Origin)が鍵となります。たとえば、日米貿易協定の対象品目であれば、適切な証明書を添付することで関税が低く抑えられる可能性があります。
ただし、各国間協定には適用条件があり、製品の原材料構成や加工工程なども確認されます。事前に税関や通関士と相談することが推奨されます。
逆輸入の税務・通関実務上の注意点
・関税分類(HSコード)の確認:類似製品でも関税率が異なる場合があるため慎重に選定。
・インボイス価格の妥当性:関連会社間取引のため、移転価格税制にも注意が必要。
・通関書類の整備:原産地証明、インボイス、パッキングリストなどを正確に用意すること。
まとめ:企業グループ内取引でも「国境」は超えられない
米国の企業が海外現地法人から製品を輸入する場合、「誰が作ったか」ではなく「どこで作ったか」が重要です。関税の有無や税率は原産地ルールに従って判断され、政治的な関税政策(たとえばトランプ関税)にも影響を受けます。
企業としては、通商協定の活用や原産地証明の整備、通関業務の精緻化により、税コストの最小化を図ることが求められます。専門家のアドバイスを得ながら、安定した国際取引体制を構築しましょう。
コメント