高齢の役員や経営者が役員報酬を見直す際、「報酬を下げたことで年金額が増えるのはいつからか?」という疑問を持つ方は少なくありません。特に在職老齢年金の制度に該当する場合、その反映時期を正しく把握しておくことは、年金受給額の見通しを立てるうえで非常に重要です。本記事では、役員報酬の変更がどのように年金額へ影響するか、具体的な反映時期や手続きの流れについて詳しく解説します。
在職老齢年金の仕組みとは?
在職老齢年金とは、65歳以降に厚生年金に加入しながら働く方に対し、給与と年金の合計額が一定以上になると年金の一部または全部が支給停止となる制度です。報酬が高いと支給額が減少し、逆に報酬が下がると年金額が増える可能性があります。
具体的には、「総報酬月額相当額(基本的には直近3ヶ月の報酬平均)」と「年金月額」によって、支給額が決定されます。70歳以上でも厚生年金に加入していればこの制度が適用されます。
役員報酬を減額した場合の反映スケジュール
役員報酬を変更した場合、それが年金に反映されるのはすぐではありません。反映のタイミングは以下のようなスケジュールになります。
6月分の報酬を減額し、7月に支給した場合:この変更は「7月の報酬」として認識され、7月・8月・9月の3ヶ月間で標準報酬月額が再計算されます。そして、その結果が10月から反映されるのが一般的です。
つまり、年金の支給額が実際に増えるのは、10月分(11月支給)からとなります。
年金額変更のための手続きと注意点
役員報酬が変更されると、企業側が「月額変更届(随時改定)」を日本年金機構へ提出します。この手続きによって、標準報酬月額が改定され、在職老齢年金の支給停止額が再評価されます。
なお、月額変更届が適用されるには、「固定的賃金の変動があり」「その後3ヶ月間の平均報酬が2等級以上変動している」必要があります。単月の報酬減では反映されない場合があるため注意が必要です。
報酬変更の実例と年金反映の流れ
たとえば、76歳の会長が2024年6月分の報酬を50万円から15万円に大幅減額し、それを7月に支給したとします。この場合、7月〜9月の3ヶ月間の報酬平均が新しい基準となり、10月以降の標準報酬月額が変更されます。
その結果、11月支給分の年金から支給停止額が減額または解除され、受給額が増加するという流れになります。
在職中でも年金を最大限活用するために
在職老齢年金は一見複雑ですが、報酬と年金の関係を正しく理解すれば、制度の中で最大限有利に活用することが可能です。報酬を見直すことで、年金の受給額が増えるだけでなく、節税にもつながることがあります。
年金額の増減や支給停止状況については、日本年金機構からの通知や「ねんきんネット」で確認できます。不明点がある場合は、社会保険労務士や年金事務所への相談をおすすめします。
まとめ:報酬変更の効果が出るのは3ヶ月後
役員報酬を下げたことで年金が増額されるのは、変更から3ヶ月間の報酬平均に基づいて再計算されるため、概ね変更の約4ヶ月後となります。たとえば7月に報酬減が適用されれば、年金への反映は10月分(11月支給)からが目安です。
正しい手続きと時期を理解し、在職老齢年金を賢く活用しましょう。高齢役員の年金戦略は、資産形成と生活の安定に直結する重要なテーマです。
コメント