高齢期の経済的不安を軽減するために年金の繰上げ受給を選択する人は少なくありません。しかし、後に病気や障害が発生した場合、障害年金の受給が制限されることがある点は注意が必要です。特に人工透析が必要な腎疾患などは、障害年金の対象になる可能性があるため、事前に制度の仕組みを理解しておくことが重要です。
年金繰上げ受給と障害年金の関係
老齢基礎年金を繰上げ受給している場合、原則としてその後に障害基礎年金を受給することはできません。これは「老齢年金と障害年金の併給制限」があるためです。
ただし、制度上は老齢年金と障害年金のどちらかを選択する仕組みになっており、条件を満たせば障害年金に切り替えることも可能です。ただし、繰上げ受給をしていると、障害年金を受ける「資格を失うケース」もあるため、慎重な判断が求められます。
透析と障害年金の関係
透析は障害等級の対象となる病状です。具体的には、腎疾患による人工透析を継続的に行う場合、原則として障害等級2級が認定されます。この場合、障害基礎年金の対象になります。
しかし、繰上げ受給を開始した後に初診日がある透析治療については、障害年金の請求資格が失われている可能性があります。
「初診日」が重要なポイント
障害年金では、障害の原因となる病気について最初に医療機関を受診した日、つまり「初診日」が非常に重要です。この初診日が、老齢基礎年金の繰上げ受給を開始する前であれば、障害年金の受給資格が維持されることがあります。
逆に、繰上げ開始後に初診日がある場合は、障害年金の請求権自体が認められないケースが多いです。
国民年金加入者と障害基礎年金
厚生年金加入者は障害厚生年金の対象になりますが、自営業や無職などで国民年金に加入していた方は、障害基礎年金のみが対象です。
今回のケースのように、当時国民年金と国民健康保険に加入していた場合は、障害基礎年金が対象になりますが、繰上げ受給済みであれば、その受給によって障害基礎年金の請求資格が消滅している可能性があります。
将来的な治療費対策と選択肢
透析など高額な医療費がかかる治療に備えるためには、他の公的支援制度も確認しておく必要があります。以下の制度は一定の条件で利用可能です。
- ・高額療養費制度(医療費の自己負担上限あり)
- ・自立支援医療制度
- ・生活保護(生活や医療費に困窮した場合)
また、介護保険の利用や、透析導入後の身体障害者手帳取得により福祉サービスを受けることも可能です。
まとめ|年金と障害年金の制度を理解して備える
老齢年金を繰上げ受給すると、後から発生した病気による障害年金の請求が難しくなることがあります。特に透析のようなケースでは、初診日の時期や加入していた年金制度が大きく影響します。
今後の医療費負担や生活に不安がある場合は、年金事務所や社会保険労務士に相談し、自身の状況でどの制度が使えるか早めに確認することが大切です。
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