公務員や地方職員が加入する共済組合の貯金事業は、長年にわたって「安全で利率も良い」とされ、信頼されてきました。しかし、近年は金融市場の変化や金利低下の影響により、一部の共済貯金において含み損が発生していることも事実です。今回は、特に話題となっている愛知県都市職員共済組合の状況をきっかけに、共済貯金のリスクと向き合うべきポイントを詳しく解説します。
共済貯金の仕組みと「分別管理」の基本
共済組合では、主に次の3つの事業を別々の経理で運用しています。
- 長期給付事業(年金関連)
- 短期給付事業(健康保険・医療給付)
- 貯金事業(組合員の任意預け入れ)
このうち貯金事業は独立した勘定で管理されており、他の事業から赤字補填は行われない仕組みです。つまり、仮に貯金勘定が含み損などで資産不足となっても、年金や健康保険の資金でカバーされることはありません。
なぜ含み損が発生するのか?
組合が預かった貯金は、運用されて利息として組合員に還元されますが、低金利時代の長期化や市場の変動によって、保有している債券や投資商品の評価損が膨らむケースが発生しています。
たとえば、10年前に購入した利率1%の長期債券が、現在では市場金利が上昇して利率3%の債券と比較されると、その価値は下落します。この状態が「含み損」となり、保有資産の帳簿上の評価が下がってしまうのです。
「債務超過」とは?危険性の正しい理解
評価損が大きくなり、資産額よりも負債額が上回る状態が「債務超過」です。共済の貯金勘定においてこれが続くと、いずれ元本を返せなくなるリスクが懸念されます。
ただし、含み損はあくまで「現時点での評価額」であり、運用期間満了まで持ち続ければ償還されるものもあります。したがって、すぐに破綻するというわけではありませんが、資金を取り戻すためには運用期間の終了を待つしかないという不自由さがあります。
今すぐ解約すべき?判断するためのチェックリスト
- 運用資金が急に必要になる予定があるか?
- 他に安全性の高い運用先があるか?
- 現在の貯金利率と含み損を含めたリスクを理解しているか?
- 組合の公開情報に目を通しているか?
上記のようなポイントを整理した上で、感情ではなく情報と計画に基づいた判断をすることが大切です。ネットなどでの「早い者勝ち」という言葉に焦ってしまうのではなく、自分自身の資産状況と照らし合わせて冷静に判断しましょう。
貯金事業に関する情報をチェックする習慣を
共済組合は、毎年度の事業報告書や運用状況を公開しています。たとえば「資産の評価額」「運用利率」「今後の見通し」などは定期的にチェックしておくべき項目です。
公式サイトや組合からの通知・説明会などの機会を活用し、情報のアップデートを心がけましょう。
まとめ:大切なのはリスクを理解して備えること
共済貯金は制度としては安全性が高いとされてきましたが、時代の変化とともに運用リスクが無視できない状況になってきています。
「何となく安心だから置いておく」ではなく、自身のライフプランや他の資産とのバランスを考えたうえで、定期的に見直すことが必要です。解約が正解となる場合もあれば、保有継続が有利となるケースもあるため、まずは正しい知識を持つことから始めましょう。
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