預金者から見ると「銀行にお金を預けると元本が減らず、わずかながらも利子がつく」というのは非常に安全かつ魅力的な制度に見えるかもしれません。しかし、銀行側にとってはコストが発生するはずです。ではなぜ、銀行は預金を受け入れ、利息までつけるのでしょうか?その背景にある金融の仕組みと銀行のビジネスモデルについて解説します。
預金は銀行の“原材料”
銀行にとって預金とは、いわばビジネスの原材料です。私たちが預けたお金は、銀行の資金として企業への融資や住宅ローンなどに使われ、利息付きで回収されます。その利息収入が銀行の主な利益となります。
たとえば、預金者に0.001%の利息を支払いながら、企業には1.0%以上の利率で融資していれば、その差額が銀行の利益(利ざや)になるのです。これは銀行にとって極めて効率的な収益モデルです。
銀行のバランスシートと信用創造
銀行は「信用創造」という仕組みのもとで経済に貢献しています。信用創造とは、預金の一部を準備金として中央銀行に預けながら、残りを貸し出すことで、世の中のマネーを増やしていく仕組みです。
たとえば、100万円を預金すれば、90万円程度が貸し出され、さらにその貸出先がまた銀行に預金すると…という連鎖が起こります。この循環が経済を活性化させ、銀行の役割を大きくしています。
投資信託との違いとリスクの所在
投資信託などの金融商品は、元本が変動する代わりに高い利回りを期待できます。一方、銀行預金は元本保証(一定額までの預金保険あり)であり、リスクがほとんどありません。
このリスク差が利回りの差として現れます。銀行は預金を元にリスクを取って貸出を行い、そのリスクプレミアムを利ざやとして稼いでいるのです。つまり、銀行は預金者の代わりにリスクを引き受ける立場にあると言えるでしょう。
預金者にもメリットがある仕組み
預金者は、元本保証という安心感を得ながらも、資金の安全な保管や振込・決済といった金融サービスの恩恵を受けています。ATMやネットバンキングといった利便性も、預金という仕組みがあるからこそ提供されるのです。
また、銀行にとって預金が集まるほど、信用力が高まり、より多くの資金を市場で調達できるようになります。つまり、預金は銀行にとっても信用の源泉となっています。
まとめ:銀行と預金は共存関係にある
銀行が預金に利息をつける理由は、単なる“善意”ではなく、銀行がビジネスを展開するための資金源として必要不可欠だからです。預金者にとっては安心と利便性が、銀行にとっては利益の源泉が、それぞれの立場でメリットを生み出しています。このように、預金制度は銀行と預金者の“共存関係”によって成り立っているのです。
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