交通事故やトラブルでけがをした場合、自分で加入している傷害保険から医療費が一部支払われることがあります。しかし、それだけでは足りない場合、残りの医療費を加害者に請求できるのか――。本記事では、このようなケースにおける加害者への請求可否や注意点について、法律的視点と実例を交えてわかりやすく解説します。
傷害保険とは?補償の基本を押さえよう
傷害保険は、自分自身が事故やケガをした際に支払われる保険です。支払額は契約時の補償内容により異なり、「治療費の実費分」ではなく、「あらかじめ決められた金額」が給付される定額型が主流です。
たとえば、1回の通院につき2,000円、入院1日につき5,000円という内容であれば、たとえ5,000円の通院費用がかかっても、支給されるのは2,000円のみとなります。
加害者がいる場合、不足分は請求できる?
相手に法的な責任(不法行為など)がある場合、保険でまかないきれない医療費などの損害については「損害賠償請求」として加害者に求めることが可能です(民法709条など)。
ただし、加害者が故意または過失によりケガを負わせたこと、実際に治療費などが発生したことを立証する必要があります。そのため、診断書や領収書、事故の状況を証明する資料が重要となります。
傷害保険と損害賠償請求の関係
よくある誤解として、「保険金を受け取ったら、それ以上請求できない」というものがあります。しかし、傷害保険は契約者が受け取る私的な給付であり、損害賠償とは別の性質です。そのため、実際に発生した損害額と保険金との差額を加害者に請求することが可能です。
例:治療費5,000円のうち、保険で2,000円が支給された場合、残りの3,000円を加害者に請求できます。
請求に必要な証拠と注意点
- 診療報酬明細書や領収書
- 医師の診断書
- 事故状況の説明書や警察の事故証明書(交通事故等)
- 傷害保険の給付内容の証明(損害との二重請求を避けるため)
加害者が支払いに応じない場合、内容証明郵便などで正式に請求し、それでも難しい場合は民事調停や訴訟手続きも検討されます。
請求額に上限はあるのか?
損害賠償の請求額に法律上の上限はありませんが、実際にかかった損害額を超えて請求することはできません。逆に言えば、「実費分+精神的苦痛」などを含めた請求も可能です。ただし、慰謝料等についてはケースバイケースで、法的な判断が必要になることもあります。
まとめ:保険は補助、実費は加害者請求が原則
傷害保険はあくまで自分自身のための金銭的サポートに過ぎません。相手に明確な責任がある場合は、保険で足りない分は損害賠償として加害者に請求することが可能です。必要な証拠をしっかり揃え、誠実に手続きを進めることが重要です。不安な場合は、弁護士や法テラスに相談すると安心です。
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