親の名義の実家を子どもに名義変更し、将来的に売却を検討するケースは多く見られます。しかしその際、思わぬ税金の問題に直面することがあります。本記事では、名義変更時・売却時に発生する可能性のある税金や手続きについて詳しく解説します。
親から子への不動産名義変更で発生する税金とは?
親名義の家を無償で子どもに変更する場合、贈与税の対象になります。これは、不動産を「無償または著しく低い金額で譲渡した場合」に該当するためです。
例えば、市場価格が1,000万円の住宅を0円で名義変更すると、ほぼ全額が贈与とみなされる可能性があり、最大55%の贈与税が課税されることもあります。
贈与税を抑える特例や制度はある?
贈与税を回避・軽減する制度として以下が活用されることがあります。
- 暦年課税の基礎控除(年110万円)
- 相続時精算課税制度(生前贈与を相続時に精算)
- 夫婦間・親子間の居住用不動産贈与の特例(要件あり)
ただし、これらの制度は適用条件が厳しく、事前に税理士への相談が必須です。
名義変更後の固定資産税と住民税の取り扱い
名義が子に変更されると、翌年度から固定資産税の納税義務者も子になります。親が引き続き住む場合でも、納税通知書は名義人(=子)に届きます。
また、住民税は居住地に基づいて課税されるため、子が県外に住んでいても実家の固定資産税は発生し続けます。
名義変更後に売却すると課税される税金
名義変更後に子が家を売却した場合、譲渡所得税(所得税+住民税)が発生します。譲渡所得は以下の式で計算されます。
譲渡所得 = 売却価格 − 取得費(当初の購入価格)− 譲渡費用
名義変更を受けた子が「取得費を知らない」場合、税額が大きくなるリスクがあります。
居住用財産の特例を使えば節税も可能
売却する家が「本人の居住用」だった場合、3,000万円の特別控除や軽減税率などが使えます。しかし、売却者である子がその家に住んでいなかった場合は対象外です。親が住んでいた家であっても、名義人(売主)が住んでいなければ、特例は受けられません。
実例:無償名義変更から売却したケース
たとえばAさんは、母の持ち家を無償で名義変更し、その後2年後に売却。取得費が不明で譲渡所得が高く算出され、税務署から追徴課税を受けたという事例もあります。
このように、安易に名義変更や売却を行うと、想定外の税金が発生することがあります。
まとめ:名義変更も売却も税金に注意。専門家相談が鍵
親から子への不動産名義変更では、贈与税・固定資産税・譲渡所得税など複数の税金が関係します。売却時には、取得費や居住状況に応じて税額が大きく異なるため、慎重な判断が必要です。
名義変更や売却を検討する場合は、必ず事前に税理士や司法書士に相談し、法的・税務的に不利益を被らないよう準備を進めましょう。
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