年金制度にはさまざまな給付がありますが、その中でも「加給年金」は一定の条件を満たした受給者に支給される家族手当のような存在です。特に配偶者がいる場合、その年齢や年金加入歴によって受給の可否が変わるため、誤解されやすいポイントも多くあります。本記事では、配偶者が厚生年金に20年以上加入している場合に加給年金がもらえない理由や、受給のための要件について詳しく解説します。
加給年金とは?基本的な仕組み
加給年金は、厚生年金の老齢年金(報酬比例部分)の受給者が、一定の条件を満たす配偶者や子を扶養している場合に加算される年金です。受給額は配偶者に対して約22万円(2024年度)で、子どもがいる場合はさらに加算されます。
ただし、これは「扶養的性格」を持つ給付であるため、配偶者が自立して年金を受け取っていると加給の対象外となるケースがあります。
配偶者の年金受給資格が影響する
加給年金の支給対象となる配偶者は「老齢厚生年金を受給していないこと」が条件です。具体的には、配偶者が65歳未満であり、かつ年金の受給権を持っていない必要があります。
そのため、仮に妻が厚生年金に20年以上加入しており、65歳に達して年金を受け取るようになると、「自分自身の年金で生活できる」と見なされ、夫に対する加給年金は支給されなくなるのです。
配偶者が3歳年下の場合の影響
配偶者が3歳年下であれば、夫が65歳のときに妻は62歳前後。つまりまだ年金を受給していない可能性が高く、その時点では加給年金の支給対象になる可能性があります。
しかし、妻が年金受給年齢(65歳)に達した段階で自身の年金を受け取ると、加給年金は打ち切られる(支給停止)ことになります。この時、配偶者が「加給年金に関する年金受給権を取得」するため、夫の加給年金の受給要件を満たさなくなるためです。
振替加算の仕組みと注意点
配偶者が加給年金の受給対象だったが年金を受け取るようになって加給が停止された場合、条件を満たしていれば配偶者に「振替加算」が支給されます。これは元々夫の加給年金として支給されていた額に相当する部分を、配偶者自身の年金に加算するという制度です。
ただし、配偶者の生年月日が昭和41年4月2日以降の場合は振替加算の対象外になるため注意が必要です。
具体的な事例と受給可否の目安
例:夫が65歳、妻が62歳で厚生年金加入歴20年、未受給
→この時点では妻が年金受給資格を得ていないため、夫は加給年金を受給可能です。
例:3年後、妻が65歳となり年金を受給開始
→夫の加給年金は停止される可能性が高く、条件を満たせば妻に振替加算が適用されます。
まとめ:加給年金は「配偶者の年金状況」で変わる
加給年金はあくまで扶養的意味合いが強い制度であるため、配偶者が老齢厚生年金を受け取るようになると打ち切られるのが基本ルールです。
「20年以上厚生年金に加入=加給年金は受け取れない」という単純な話ではなく、受給タイミングや配偶者の年齢によって変動するため、事前に年金事務所などで詳細な確認を行うことをおすすめします。
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