老後の資産形成として人気のあるiDeCo(個人型確定拠出年金)は、税制優遇がある一方、受け取り方によって課税額が大きく変わるため注意が必要です。特に一時金での受け取りを選んだ場合、退職所得控除の理解が重要です。本記事では、パート勤務で社会保険加入しているケースを含め、iDeCoを一時金で受け取る際の手取り額や節税のポイントについてわかりやすく解説します。
iDeCoの受け取り方法には2種類ある
iDeCoの受け取り方法には主に以下の2通りがあります。
- 一時金として一括受け取り(退職所得として課税)
- 年金として分割受け取り(雑所得として課税)
この記事では、一時金として受け取る場合の税制について解説します。
退職所得控除とは?基本ルールをおさらい
退職所得控除は、長年働いた人が不利にならないよう設けられた非課税枠です。計算式は次のとおり。
- 勤続年数が20年以下:40万円 × 勤続年数(最低80万円)
- 勤続年数が20年超:800万円+70万円 ×(勤続年数−20年)
例えば、勤続年数が45年なら「800万円+70万円×25年=2,550万円」が非課税枠となります。
シミュレーション:30年間で2,790万円のiDeCoを受け取る場合
次の条件を仮定して試算してみましょう。
- 加入期間:35歳~65歳の30年間
- 掛金:月額2.3万円
- 運用利回り:年7%
- 運用益含む最終資産:2,790万円
- 勤続年数:45年(退職所得控除2,550万円)
この場合、課税対象となる退職所得額=(2,790万円-2,550万円)÷2=120万円となります。
退職所得は「課税対象金額の1/2が課税対象」なので、120万円に対して所得税・住民税が課税されます。
課税対象 | 適用税率 | 概算税額 |
---|---|---|
所得税(120万円) | 約5% | 約6万円 |
住民税(120万円) | 一律10% | 約12万円 |
概算納税額は合計で約18万円程度、したがって手取り額はおおよそ2,772万円程度になると考えられます。
夫婦やパート勤務でも退職所得控除は使えるのか?
iDeCoに加入している本人が退職所得控除を受けるためには、「確定拠出年金規約に基づく退職所得」として受け取る必要があります。勤務形態がパートでも、社会保険加入しており企業型年金がない場合などは問題なく適用されます。
なお、複数の退職金を同年に受け取ると、控除枠が共有されるため注意が必要です。
退職所得控除を最大限に活かすポイント
退職所得控除を活用して節税するには以下の点を意識しましょう。
- iDeCoの一時金は、勤続年数=加入期間としてカウントされる
- 同一年内に退職金や他の一時金と重ならないようにする
- 退職金の受け取り時期は年をずらすことも検討
たとえば、65歳でiDeCoを一括受け取り、退職金は66歳に受け取ることで、控除を分散して有効活用できます。
まとめ:退職所得控除を知って、賢く受け取ろう
iDeCoを一時金で受け取る際、退職所得控除によって多くの部分が非課税になります。今回の例では2,550万円の控除枠に対し、受け取り額が2,790万円であれば、実際の納税はわずか18万円前後に抑えられる可能性があります。
特に運用がうまくいった場合でも、「控除額を超えた分だけが課税対象」になる仕組みを理解していれば安心です。受け取りの時期や金額を工夫することで、手取り額を最大化できるため、今からシミュレーションしておくとよいでしょう。
コメント