近年では、定年後も年金を受け取りながら働くというライフスタイルを選ぶ方が増えています。特に64歳という年齢は、年金の受給開始と再就職のタイミングが重なることもあり、保険や年金の取り扱いについて不安になるケースも少なくありません。今回は、64歳で年金を受け取りながら週20時間程度働く場合の健康保険や社会保険、年金の支払いに関する基本知識をご紹介します。
64歳で年金を受け取り始めるとどうなる?
原則として、老齢基礎年金・老齢厚生年金は65歳から支給されますが、64歳から繰り上げ受給することで早く受け取りを開始することが可能です。ただし、その分受給額が減額される仕組みになっており、減額率は1ヶ月につき0.4%です。
たとえば、64歳0ヶ月で受給を開始すると、65歳からの満額に比べて約4.8%の減額になります。この減額は一生続くため、生活設計を十分に考慮した上での判断が重要です。
週20時間程度の勤務と社会保険の関係
再就職して働く場合、週の勤務時間が20時間以上であれば、一定の条件を満たした場合に「社会保険(健康保険・厚生年金)」の適用対象となります。ただし、勤務先の規模や勤務期間の見込みによっては対象外となることもあります。
- 勤務先の従業員数が101人以上(2024年10月からは51人以上に緩和)
- 継続して2ヶ月を超えて勤務予定である
- 賃金が月8.8万円以上
これらの要件をすべて満たす場合、健康保険・厚生年金に加入する義務が生じます。つまり、64歳でも年金を受け取りながら、給与から厚生年金保険料を支払うことになるということです。
健康保険は年齢と勤務形態で分岐
健康保険については65歳未満で社会保険加入要件を満たせば、原則として勤務先の健康保険に加入します。年金受給の有無にかかわらず、週20時間以上の勤務と月収条件があれば「被保険者」として加入義務が発生するのです。
ただし、勤務条件に満たなければ、国民健康保険や配偶者の扶養に入る形になります。いずれにせよ、64歳時点ではまだ「後期高齢者医療制度」の対象外です。
年金受給中でも厚生年金を支払う必要がある?
はい、年金を受給していても、社会保険に加入する場合は給与から厚生年金保険料を支払う義務があります。64歳は「高齢者雇用保険制度」や「年金支給停止基準(在職老齢年金)」の対象年齢でもありますが、月収28万円を超えない範囲であれば、年金の全額が支給される場合が多いです。
ただし65歳以上になると厚生年金保険料の支払い義務はありますが、「年金額への加算」という形で将来の年金額に反映されます。
在職老齢年金の支給停止基準にも注意
64歳で年金を受け取りつつ就労する場合、給与と年金の合計が一定額を超えると、厚生年金の一部が支給停止となることがあります。これを「在職老齢年金制度」といい、60歳~64歳では月収+年金の月額が28万円を超えると、超過分の半分が支給停止となります。
週20時間・月8.8万円以下の範囲であれば、基本的にはこの基準には触れないと考えられますが、月収が上がる場合は注意が必要です。
まとめ:年金と就労は両立できるが、社会保険の確認は必須
64歳で年金を受け取りつつ働く場合、健康保険や厚生年金などの「社会保険の加入条件」をしっかり確認しておくことが重要です。収入や勤務時間、雇用形態によって保険料の負担や年金支給額が変わる可能性があります。
就労前には勤務先と相談し、勤務条件や社会保険の取り扱いについて明確にしておくことで、安心して働き続けることができるでしょう。特に週20時間前後の勤務は境界線になるため、条件の詳細を把握しておくことをおすすめします。
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