派遣社員として働く中で、「勤務日数が少ないのに、毎月同じくらい社会保険料が引かれて手取りが少ない」と感じる方は少なくありません。特に週4日勤務や不定期な稼働がある職場では、控除の仕組みに疑問を感じることもあるでしょう。今回は、こうした状況がなぜ起こるのか、そして対策はあるのかをわかりやすく解説します。
社会保険料は「標準報酬月額」で決まる
社会保険料(健康保険料や厚生年金保険料など)は、実際の月収にかかわらず「標準報酬月額」という基準に基づいて決定されます。この標準報酬月額は、原則として年1回または給与が大きく変動したときに見直されるもので、日々の出勤状況とは無関係です。
たとえば、月20万円の月収で契約した場合、たとえその月に10万円しか稼げなかったとしても、標準報酬月額が20万円ならその額をもとに社会保険料が引かれるため、手取りが大きく減ってしまいます。
勤務日数が少ない場合に手取りが少なくなる理由
標準報酬月額は、月額給与の平均で決まりますが、毎月の実労働日数が少ない派遣社員にとっては不利に働くことがあります。たとえば工場の都合や派遣先のスケジュールで休業が多くなると、実質の稼働日が大幅に減ってしまいます。
しかし、社会保険料はあくまで登録時の報酬額をもとに算出されるため、働いた実日数に関係なく固定で控除されます。結果として、収入が少ない月ほど保険料の割合が高くなり、手取りが非常に少なくなってしまうのです。
標準報酬月額はどうやって決まるのか?
標準報酬月額は、社会保険に加入した当初の3ヶ月間の報酬(給与・手当など)を平均して決定されます。これを「定時決定」と呼びます。また、月額給与が大幅に変わった場合には「随時改定」が行われることもあります。
たとえば、月20万円の契約で3ヶ月間フルに勤務した場合、その平均月収20万円が基準となり、以降の保険料もその額に応じた等級に基づきます。勤務日数が減って収入が落ちたとしても、自動で保険料が減るわけではない点に注意が必要です。
保険料が高く感じる場合の具体的な対処法
社会保険料の見直しを検討する場合、「随時改定」の条件に当てはまるかを確認しましょう。具体的には、月収が連続して3ヶ月間、等級で2等級以上下がるような変化があれば、保険料の再設定が可能になります。派遣会社の担当者や社会保険労務士に相談するのが最も確実です。
また、派遣契約の内容を見直すことで、社会保険の加入基準を満たさない働き方(たとえば週20時間未満など)にする選択肢もありますが、将来的な年金や医療保険の保障に影響するため、慎重な判断が必要です。
実例:週4勤務で収入が不安定なAさんの場合
たとえば20代女性Aさんは、週4勤務で派遣として働いています。契約時はフルタイム前提だったため、標準報酬月額はフルタイム時の月収で設定されており、保険料もそれに基づいて引かれています。
最近は工場の生産調整により出勤日数が減少し、月収が大幅にダウン。手取りが毎月10万円台に落ち込んだことで、生活が厳しくなっています。Aさんは派遣会社に相談し、3ヶ月の収入減少実績をもとに「随時改定」を申請し、保険料の等級が見直され、手取りが改善しました。
まとめ:制度の仕組みを知って賢く対処しよう
社会保険料は「働いた日数」ではなく「契約された給与額」によって決まるため、勤務日数が少ない派遣社員にとっては手取りが少なくなるという落とし穴があります。しかし、制度の仕組みを正しく理解し、必要に応じて「随時改定」などの対応を取れば、負担を軽減することも可能です。
まずは自分の標準報酬月額がいくらで設定されているか、そして現在の収入状況と照らし合わせて見直してみましょう。必要であれば派遣会社や専門家に相談することも大切です。
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