法人税・消費税の申告における書面添付が行われない理由とは?会計実務の裏側を徹底解説

税金

決算申告の際に提出される「書面添付制度」は、税理士が申告内容の適正性について意見を述べる制度で、税務調査のリスク軽減や信頼性向上に寄与します。しかし、法人税や消費税の書面添付がある年とない年が混在していることに疑問を感じる方も多いのではないでしょうか。今回は、書面添付が付かない可能性のあるケースや背景について、税理士事務所の実務も交えながらわかりやすく解説します。

書面添付制度とは何か

書面添付制度は、税理士が作成した決算申告書に対して「この申告書は適正に作られた」という意見を述べる制度で、税理士法第33条の2に基づいています。これには法人税・所得税・相続税・消費税などが対象となります。

書面添付がある場合、税務署が税務調査を行う際にはまず税理士への意見聴取(事前通知)が行われ、いきなり調査に入ることが少なくなるというメリットがあります。

なぜ書面添付が付かない年があるのか

まず、「忘れ」ではなく意図的に添付しない場合、次のような理由が考えられます。

  • 決算が急ぎで処理された年:期末から申告期限までの時間が短く、十分な検討が行えなかった。
  • 税務リスクが高い取引があった年:あえて書面添付を避けることで、税務署からの注目を避ける戦略。
  • 税理士側の判断:黒字であっても、税理士が添付に必要な条件を満たしていないと判断する場合がある。
  • 報酬に含まれていない:書面添付は追加報酬が発生するケースもあり、毎年添付しない方針の事務所もある。

これらは税理士事務所の方針や、クライアントとの関係性によっても左右されます。

法人税と消費税で添付状況が異なる理由

法人税には書面添付があるが、消費税にはない、またはその逆といったケースはよくあります。その理由としては。

  • 消費税は金額が少額なことが多く、税務リスクも相対的に低いため添付しない
  • 消費税の計算に特殊な取引が多く、添付の可否を慎重に判断する
  • 書面添付に必要な資料(取引明細や根拠書類)の準備状況が異なる

たとえば、簡易課税制度を使っている場合は添付しないという判断も見られます。

黒字申告でも添付がない理由

「黒字=添付すべき」と思われがちですが、実務的には必ずしもそうではありません。以下のような状況では黒字でも添付しない判断がされます。

  • 前年度に税務調査が入ったばかりで今年の添付は見送る
  • 決算書の整合性に自信がない(たとえば、棚卸資産の評価など)
  • 税理士が十分な資料を受け取れていないため、意見表明を避ける

つまり、書面添付は「付ける=信頼される」だけではなく、「付けない=慎重な判断」と捉えることもできます。

添付の有無は信頼のバロメーターではない

毎年のように添付していても、税務署が重視するのは申告内容の整合性や納税者の対応姿勢です。書面添付がなければ信頼性が低いというわけではなく、あくまで税理士の判断に基づいた戦略の一つです。

実際、多くの中小企業では「必要な年だけ添付する」というスタンスを取っており、添付が義務でないことを前提とした運用がされています。

まとめ:書面添付の有無には多くの背景がある

書面添付制度は、税務調査を穏便に進めるための有効な手段ではありますが、必ずしも毎年必要なものではなく、添付の有無には税理士の戦略的判断が含まれていることがほとんどです。

納税者としては、書面添付がない年でも過度に心配せず、気になることがあれば税理士に正直に確認することが重要です。知識を持っておくことで、より良い経営判断ができるようになるでしょう。

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