会社を退職した後、「親の扶養に入りたい」と考える人は少なくありません。特に同居している親が会社の健康保険に加入している場合、「扶養に入れば保険料がかからないのでは」と期待するのも自然な発想です。しかし、実際には扶養に入れないケースも多くあります。この記事では、なぜ親の扶養に入れないのか、どうすればよいのか、必要な書類や手続きについて詳しく解説します。
健康保険の扶養とは?制度の基本を理解しよう
親の健康保険に扶養として加入するためには、「被扶養者の認定条件」を満たす必要があります。これは民間企業の健康保険組合や協会けんぽが定めるルールに基づいています。
主な条件は以下の通りです。
- 年収130万円未満(60歳以上または障害者の場合は180万円未満)
- 親と生計を同一にしている
- 主たる収入源が親であること(本人に収入がほぼない状態)
- 失業中であれば、雇用保険の基本手当(失業保険)を受給していない
つまり、「収入が130万円未満で無職、失業保険も受けていない」という人でなければ、原則として親の扶養に入ることはできません。
なぜ市役所で「扶養に入れない」と言われたのか
多くの人が混同しがちですが、市役所が扱っているのは主に「国民健康保険」です。一方、「親の健康保険の扶養に入る」手続きは、親が加入している健康保険組合または協会けんぽが担当しています。
そのため、市役所では「国民健康保険への加入が必要です」と案内されるのは当然であり、「親の扶養に入れるかどうか」の判断はしていません。加入できないと言われたのは、市役所の制度では扶養という制度自体がないからです。
親の扶養に入るための手続きと必要書類
親が加入している健康保険組合または協会けんぽに「被扶養者(異動)届」を提出することで、扶養の申請が可能です。必要な書類は保険組合によって異なる場合がありますが、一般的には以下のものが必要です。
- 被扶養者異動届
- 続柄を確認できる住民票
- 退職証明書または資格喪失証明書
- 収入証明書(源泉徴収票や雇用保険受給資格者証)
- 本人確認書類(マイナンバーカードなど)
- 離職票(提出が求められる場合あり)
健康保険組合によっては、追加で「仕送り証明書」や「同居証明」が求められることもあります。
扶養に入れない場合は国民健康保険に加入を
親の扶養に入れなかった場合は、自分自身で「国民健康保険」へ加入する必要があります。加入の手続きは市区町村の役所で行います。必要書類は以下の通り。
- 健康保険資格喪失証明書
- 本人確認書類
- マイナンバー
- 印鑑(自治体によっては不要)
保険料は前年の所得に応じて決まるため、所得がゼロであれば軽減措置の対象になることもあります。役所での加入手続きには20〜30分程度かかることが一般的です。
失業保険の受給と扶養の関係にも注意
退職後に失業保険を受け取っている場合は、金額にかかわらず「就労可能」と見なされるため、親の扶養に入ることはできません。
失業給付の受給が終了し、所得が一定以下になれば再度申請可能ですが、その際も「現時点での見込み収入が年間130万円未満であるか」が審査されます。
まとめ:親の扶養に入れない理由を理解し、次のステップへ
退職後、親の健康保険の扶養に入りたい場合には、社会保険制度と国民健康保険制度の違いを理解することが大切です。市役所で断られた理由は、制度の対象が異なるためであり、手続きをするべき窓口も異なります。
扶養に入れない場合は、速やかに国民健康保険への加入手続きを進めましょう。不明な点は、親の会社の健康保険担当者または市役所の窓口で相談するのが安心です。
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