個人経営クリニックの社会保険加入義務とは?常勤5人以上・パートの扱い・3/4要件の判断基準を解説

社会保険

小規模な個人経営クリニックでも、一定の条件を満たすと社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入義務が生じます。特に常勤スタッフ数のカウントや、パートスタッフの扱い、3/4要件の判定などは現場で混乱が生じやすいポイントです。本記事では、社会保険加入義務の判定基準をわかりやすく解説します。

常時5人以上の従業員がいるかどうかがポイント

厚生年金保険と健康保険の強制適用事業所に該当するには、次の条件を満たす必要があります。

  • 法人でない場合(個人事業) → 常時5人以上の従業員がいること
  • 業種が適用業種(医業など)であること

したがって、医業に該当する個人経営のクリニックで常勤の従業員が5人以上であれば、社会保険の加入義務が原則発生します。ただし、パートタイマーの扱いによってこの“5人”のカウントは変動します。

パートスタッフは「常時使用」かどうかで判断

パートスタッフが社会保険加入義務判定に含まれるかどうかは、「常時使用されるか」によって異なります。

  • 毎週決まった時間に勤務しており、雇用契約が継続的に存在する場合 → “常時使用”とみなされる可能性大
  • 勤務日数や時間が不定期で、雇用契約の期間が短期的 → 含まれないこともある

今回のように「週2日だけ固定で、それ以外はほぼ常勤並だが週によって休むこともある」というケースでは、実際の勤務実績と雇用の継続性が判断材料になります。

3/4以上勤務の「被保険者資格」と「人数カウント」は別概念

混同されがちですが、「常勤の3/4以上勤務していれば社会保険に加入できる」というルールは、被保険者本人の加入条件であり、5人以上かどうかの人数カウントとは別の話です。

つまり、パートスタッフが週30時間勤務していれば「3/4要件」を満たし、本人の加入資格が発生しますが、その人が“常時使用の従業員”であるかどうかを別途判断し、事業所の加入義務があるかが問われるのです。

「常時使用」かどうかの判断期間は?

常時使用かどうかの判断に「1年」や「月単位」といった明確な期間は法律上定められていませんが、実務上は3か月~6か月程度の勤務実績が重視されます。

たとえば、週20時間以上の勤務が3か月以上続いていれば、「常時使用」の認定対象となる可能性が高いとされます。過去の実績と今後の予定、雇用契約内容の3点セットで判断されます。

社会保険適用回避の意図があると指摘される場合も

本来5人以上の常時使用者がいるにもかかわらず、社会保険に加入していないと、年金事務所からの調査・是正指導を受けることがあります。

その際、「パート扱いにしているが、実質的には常勤に近い勤務実態がある」と見なされると、遡及適用(過去分をさかのぼって保険料を徴収される)となるリスクもあります。

まとめ

個人経営クリニックでも、常勤職員5人以上かつ「常時使用されるパートが含まれる」場合、社会保険への加入義務が発生します。勤務日数・時間・契約の継続性をもとに、各従業員の扱いを正確に把握しておくことが重要です。3/4要件は「本人の加入条件」であり、事業所の義務判定とは別です。心配な場合は、年金事務所や社労士に相談して明確にしておきましょう。

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