育児休業から復帰し、再び妊娠・出産を控える中で、「標準報酬月額」の取り扱いや「出産手当金」の計算方法について疑問を感じる方は多いでしょう。特に「育児休業等終了時報酬月額変更届」を提出するかどうかで、出産手当金の金額が大きく変わる場合もあります。この記事では、その仕組みや注意点をわかりやすく解説します。
標準報酬月額とは?出産手当金にどう関係する?
標準報酬月額とは、健康保険や厚生年金の保険料や給付金の計算の基準となる金額で、毎月の給与額などを基に算出されます。出産手当金は、この標準報酬月額を基に日額が計算され、その約3分の2が支給されます。
つまり、標準報酬月額が下がれば出産手当金も減り、上がれば増える仕組みです。そのため、変更届の提出タイミングによって支給額に大きな影響を及ぼします。
育児休業等終了時報酬月額変更届とは
この届出は、育休から復帰した後に給与が大きく変動した場合、例外的にすぐ標準報酬月額を見直せる制度です。通常の定時改定(月収に応じた年1回の見直し)とは異なり、育休復帰後3ヶ月以内の給与を基に標準報酬月額を変更できます。
これにより、時短勤務で復帰している期間の給与が低いと、それを反映した低い標準報酬月額が適用され、出産手当金にも影響が出ます。
届出を出すとどうなる?出さない場合との違い
届出を出した場合、8月までの時短勤務期間中の低い給与が反映され、9月からのフルタイム復帰の給与は計算対象外になります。その結果、11月からの産休で受け取る出産手当金は低い水準で算定される可能性が高くなります。
一方、届出を出さなければ通常の随時改定ルールが適用され、9月からのフルタイム給与が反映される可能性が高くなります。そのため、手当金額としては有利になる場合が多いです。
随時改定との関係と適用タイミング
随時改定とは、月収が大きく増減したときに、標準報酬月額を改定する制度です。原則として、3ヶ月間の平均報酬をもとに行われ、その後の4ヶ月目から適用されます。
このため、9月からフルタイム復帰し、報酬が大きく変わった場合、9~11月の給与平均により12月から随時改定が適用される可能性があります。ただし、出産手当金は11月から支給されるため、影響を受けにくくなります。
出産手当金に不利にならないための選択肢
今回のように「時短勤務→フルタイム→産休」という流れであれば、報酬月額変更届を提出しない選択の方が、出産手当金額に有利に働くことが多いです。
提出しないことで標準報酬月額の変更が先延ばしとなり、産休入り時点での報酬額が高く評価される可能性があるためです。
まとめ:提出は慎重に、収入シミュレーションを忘れずに
育休から復帰してすぐの給与を基にした報酬月額変更届は、制度として非常に便利ですが、産休や出産手当金に与える影響も大きいため、提出の可否は慎重に検討すべきです。
特に収入が大きく変動する場合は、勤務先の担当者や社会保険労務士など専門家と相談しながら、どの選択がもっとも自分にとって有利かを冷静に判断することが重要です。
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