会社員生活を終える時期が近づくと、「退職後も年金を納めた方が良いのか」「受取額はどれくらい変わるのか」などの疑問が浮かびます。とくに60歳までの間に厚生年金から国民年金のみの支払いに変わるケースでは、老後の生活設計にも影響を及ぼします。今回は、退職を目前にした方が年金額の見通しをどう立てるべきかを詳しく解説します。
現在の年金見込み額と条件
例えば、56歳で「ねんきん定期便」に記載された受給見込み額が年間約190万円(国民年金+厚生年金の合算)だったとしましょう。これは、60歳まで現在の働き方を継続した場合の試算です。
57歳で退職し、以降60歳までは自営業や無職として国民年金(第1号被保険者)だけを支払った場合、厚生年金の加入が止まり、加算される分がなくなります。よって、年間の年金額は若干減ることになります。
厚生年金が加算される仕組みとは
厚生年金の金額は、加入年数と標準報酬月額によって決まります。平均的な給与水準で働いていた場合、1年間の厚生年金加入で約2万円〜3万円程度の年金額が増えるとされています。
そのため、57歳で退職した場合、58歳から60歳までの3年間で加算されるはずだった6万〜9万円分が失われる可能性があります。ただし、これらはあくまで標準的なモデルであり、実際には報酬や就労形態によって変動します。
国民年金のみの納付でも基礎年金は増える
退職後に厚生年金の対象外となっても、国民年金(基礎年金)を継続して支払うことで、老齢基礎年金の受給額は着実に増えていきます。2025年度時点では、国民年金を1年間納めると、年間で約1万9,000円ほど年金額が増えるとされています。
つまり、国民年金のみで3年間支払えば、基礎年金だけで年間5万7,000円ほど増える可能性があります。ただし、納付漏れがあると将来の年金に直接影響するため、確実な納付が大切です。
早期退職の影響と戦略的選択
早期退職は「時間の自由」や「体への負担軽減」といったメリットがありますが、年金額という視点ではやはり不利になります。57歳で退職した場合、厚生年金に3年分加入できなかったことで最大約9万円程度、国民年金のみを継続した場合でも差額は4万円前後になることがあります。
しかし、この差を埋めるために就労を続けた場合、社会保険料や税金などの支出も増えることを忘れてはいけません。トータルのキャッシュフローで考えることが重要です。
具体的な年金額の確認方法
最も正確な見込み額を知るには、ねんきんネットで将来の年金見込額を試算することが有効です。年金事務所で「将来のシミュレーション」をお願いすることもできます。
また、現在の就労状況・退職時期・退職後の納付方法などをもとに、複数パターンの受取額を出してもらうことで、より安心して決断することができます。
まとめ:厚生年金の喪失は減額要因だが、国民年金での対策も可能
57歳で退職し、60歳まで国民年金のみを納める場合、厚生年金の未加入によって年金受取額は数万円単位で減少する可能性があります。ただし、国民年金をしっかり納めれば、基礎年金の部分は増えるため、全体的なダメージはある程度抑えられます。
ライフプランと照らし合わせて「いま稼ぐか」「老後に備えるか」を検討し、必要に応じて年金事務所での個別相談を活用しましょう。
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