法人を一時的に休眠状態にする際、気になるのが「社会保険」の取り扱いです。とくに1人で運営している株式会社の場合、会社としての活動を停止するだけで済むのか、それとも社会保険の脱退も必要なのか悩む方は多いのではないでしょうか。本記事では、休眠手続きと社会保険の関係について、実務経験に基づいた具体的な解説をお届けします。
休眠とは?登記上の活動停止を意味する
株式会社を「休眠」するとは、法務局に対して休眠届(休業届)を提出し、実質的に事業を行っていないことを対外的に示す手続きのことです。税務署や都道府県税事務所への届出も必要になります。
ただし、この手続きは「登記上」「税務上」のものであり、自動的に社会保険が停止されるわけではありません。
1人社長でも社会保険は原則加入義務がある
法人を設立した時点で、従業員が1人(=代表取締役)であっても健康保険と厚生年金保険の適用事業所となるため、社会保険への加入が義務付けられます。
したがって、事業を実際に行っていなくても、法人が存在し役員報酬が発生している場合は、保険料の納付義務が続きます。
休眠に伴い社会保険をやめるには?
社会保険を停止するためには、以下のような手続きが必要です。
- 税務署・都道府県税事務所へ「休業届」提出
- 日本年金機構へ「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」提出
- 「被保険者資格喪失届」の提出(役員を含む)
ただしこの際、役員報酬を0円に変更する必要があります。役員報酬がある限り、たとえ実務がなくても「給与支払いがある」と判断され、保険料負担が続いてしまうのです。
社会保険脱退後は国民健康保険・国民年金へ
法人の社会保険をやめた後、個人としては自動的に国民健康保険および国民年金への加入が必要になります。手続きは市区町村役場で行います。
なお、扶養に入れるパートナーがいれば、配偶者の社会保険の扶養に入る選択肢もありますが、条件によっては認められないこともあるため事前確認が必要です。
具体例:社会保険をやめた1人社長のケース
たとえば、30代の1人社長が業務委託の仕事が減り、一時的に法人を休眠させたケースを考えてみましょう。彼は税務署に休業届を出し、役員報酬を0円に設定。続いて年金事務所で保険喪失届を提出し、社会保険を脱退しました。その後、市役所で国保・国民年金に切り替え。毎月の負担が大幅に軽減されました。
まとめ:社会保険をやめるには明確な手続きが必要
株式会社を休眠する場合、「社会保険もやめる」には法人としての手続きだけでなく、役員報酬の停止や日本年金機構への届出が必須です。忘れがちですが、これを怠ると事業をしていなくても保険料の支払いが続いてしまうリスクがあります。
個人事業に戻す予定がある、再開の目処が立っていない場合などは、適切な手続きによって社会保険を整理し、将来の負担を減らすことが大切です。必要に応じて、社会保険労務士など専門家への相談もおすすめします。
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