仕事中や通勤中にケガをした場合、「労災保険」と「健康保険」のどちらを使えばいいのか、迷う人も少なくありません。特に、労災の認定が下りなかった場合に健康保険が使えるのかどうかについては、医療機関によって説明が異なることもあります。本記事では、労災が不認定となったケースの保険の扱いと、適切な対応方法について詳しく解説します。
労災保険と健康保険の基本的な違い
労災保険は、仕事中や通勤中のケガ・病気に対して適用される保険制度です。労働者災害補償保険法に基づき、医療費は原則全額労災で支払われるため、自己負担はありません。
一方、健康保険は私傷病(私的なケガや病気)に対して適用され、自己負担が基本的に3割となります。よって、どちらの保険を使うかで負担額が大きく異なります。
「労災で申請する予定です」と伝えると起きること
病院で受診する際、「仕事中にケガをした」と伝えると、医療機関は労災として処理しようとします。この場合、患者が健康保険証を出しても健康保険ではなく労災扱いとなり、いったん10割自己負担を求められることがあります。
これは、健康保険法第55条により、「労災適用の傷病には健康保険を使ってはいけない」とされているからです。ただし、これは労災が確定している場合の話です。
労災が不認定になったときの正しい対応
労災申請をしたものの不認定となった場合でも、その傷病が私傷病と認められればあとから健康保険で処理し直すことが可能です。つまり、事前に健康保険証を提示しなくても、結果的に健康保険を使うことはできます。
たとえば、以下のような流れになります。
- ① 労災申請を前提に10割負担で受診
- ② 労災が不認定となる
- ③ 健康保険組合に申請し、保険適用として7割分が払い戻される
この手続きは「療養費払い」という制度で行われ、所定の申請書や領収書の提出が必要です。
「支払い前に健康保険証を出せば3割負担で済む」は本当か?
確かに、最初から健康保険証を出して自己負担3割で受診し、あとで労災に切り替えるという方法もあります。ただし、これはあくまで「医療機関がそれを許容した場合」に限られます。
多くの病院では、「労災か健康保険かは事前に選んでください」と言われ、両方を併用することや、あとから切り替えることに慎重です。これは、医療機関側の請求事務が煩雑になることや、国のルール上、同一の受診で複数保険を適用できないためです。
病院ごとに対応が違うのはなぜか?
実際には、病院によって対応が異なるケースがあるのは事実です。大きな理由としては以下のような点が挙げられます。
- ・病院側が労災に不慣れで事務手続きを避けたい
- ・過去の不払い事例を懸念している
- ・患者とのトラブル回避のため慎重な姿勢を取っている
このため、事前に病院の窓口で確認し、「万一労災が不認定となった場合、健康保険への切り替えや払い戻しが可能か」を聞いておくのが安心です。
まとめ:迷ったら健康保険証を提示し、状況に応じて切り替えを
仕事中のケガで医療機関を受診する際には、「労災か健康保険か」をはっきりさせる必要がありますが、迷う場合はまず健康保険証を提示し、あとから必要に応じて切り替えるのも一つの方法です。
ただし、その病院がどのように対応してくれるかは事前の確認が重要です。制度上は不認定後に健康保険で処理し直すことが可能ですが、スムーズな対応のためには、労災申請の流れ・保険証の提示・医療機関のスタンスの三点を押さえておくことがポイントです。
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