飲食業などのパート勤務において、「社会保険に加入できる条件を満たしているのに加入できない」「急にシフトを削られた」というケースは決して珍しくありません。本記事では、社会保険加入の基準や企業の義務、そして実際にあった事例をもとに、正しい知識と対処法を解説します。
社会保険加入の条件とは?
社会保険には、健康保険・厚生年金保険などが含まれ、正社員だけでなく一定条件を満たしたパート・アルバイトも加入する義務があります。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が88,000円以上
- 勤務期間が継続して1年以上見込まれる
- 学生でないこと
- 従業員数101人以上の企業(2024年10月からは51人以上)
これらの条件に該当する場合、企業は加入手続きを行う義務があり、従業員側が希望しているか否かは関係ありません。
シフトを削られた場合はパワハラに当たる?
シフトを一方的に削減されることは、業務上の合理的な理由がない限り、労働契約の不履行や不利益変更に該当する可能性があります。
特に「社会保険に入れないようにするためのシフト削減」は、社会保険逃れとして労基署や年金事務所から指導対象になることもあります。
本人の合意なしに大幅な勤務時間の削減が行われた場合、パワハラまたは不当労働行為として主張できる場合があります。
社会保険の加入を会社が拒否できる?
企業が加入条件を満たしている従業員に対し、意図的に加入を避けるような対応をとることは、法令違反となる可能性があります。
一部の企業では「エリアマネージャーが判断する」といった対応がされることもありますが、最終的に義務を負うのは雇用主です。従業員の加入条件を満たしていれば、企業の判断によらず加入手続きをしなければなりません。
実際の事例とその対処法
【事例】ある飲食チェーンで、月160時間以上働いていたパート従業員が社会保険加入の希望を出したところ、シフトを週15時間程度に削減された。
【対処】労働基準監督署と年金事務所に相談し、企業側に是正指導が入り、後に遡って保険加入と保険料調整が行われた。
このように、記録(給与明細やシフト表)を残しておくことで、行政機関への相談時に有効な証拠となります。
相談先と行動のポイント
- 日本年金機構(年金事務所):社会保険に関する相談や加入状況の通報が可能
- 労働基準監督署:労働時間の一方的な削減や不利益変更について相談可能
- 労働組合・NPO法人:パート・アルバイトの立場でも相談できる窓口あり
相談の際には、過去の勤務実績や会話記録、LINEのスクリーンショットなどを持参するとスムーズです。
まとめ:社保加入は「希望制」ではなく「義務」
パートやアルバイトであっても、一定の勤務条件を満たせば企業は社会保険への加入手続きをする法的義務があります。加入を申し出た後に勤務時間を勝手に削減された場合には、パワハラや違法行為の可能性もあります。
疑問を感じたらまずは記録を取り、しかるべき相談窓口に相談することが大切です。「知らなかった」では損をする時代。正しい知識で自分の権利を守りましょう。
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