社会保険における標準報酬月額は、給与や手当の変動に応じて見直される仕組みがあり、その代表が「随時改定(随時改訂)」です。特に昇給や減給があった場合に、この制度が適用されるかどうかで保険料にも大きな差が出るため、正しい理解が欠かせません。この記事では、随時改定の仕組みや適用タイミング、定時決定との関係について詳しく解説します。
随時改定とは?保険料を見直す仕組み
随時改定とは、給与に大きな変動があったときに標準報酬月額を再設定し、保険料を見直す制度です。具体的には、「固定的賃金の変動(基本給や定額手当など)」があり、その後3か月間の平均月額に大きな変動があれば、標準報酬月額が変更されます。
厚生年金や健康保険の保険料に直接影響するため、企業と労働者の双方にとって重要な制度です。
定時決定との違いと影響のタイミング
毎年7月に行われる定時決定(いわゆる「算定基礎届」)とは異なり、随時改定は「固定的賃金に変動があった場合」に適用されます。定時決定は4月〜6月の給与から平均を出し、9月分保険料(10月支払給与)から反映されます。
一方で随時改定は、「固定的賃金の変更があった月の翌月から3ヶ月間の平均月額」を見て、条件を満たせばその3ヶ月目の翌月から適用されます。
7月に昇給があった場合の具体的な反映時期
たとえば、7月に基本給が26万円→27万円に昇給した場合。
- 対象月:7月・8月・9月の3ヶ月
- 3ヶ月の平均給与を算出し、変動が等級1等級以上であれば随時改定の対象
- 新しい標準報酬月額は「10月1日付」で改定
つまり、10月支払給与(9月分)での定時決定がすでに行われていたとしても、昇給後3ヶ月の結果次第では、随時改定でさらに変更が入る可能性があります。
随時改定の判定条件と例外
随時改定が適用される条件は以下の通りです。
- 固定的賃金(基本給・通勤手当など)の変更がある
- 変更後の3ヶ月の平均報酬と現在の標準報酬月額が「1等級以上」差がある
- 一時的な手当や残業代などの変動では原則として適用されない
ただし、3ヶ月のうちに欠勤や休職で給与が著しく減る場合など、平均が正確に出せない場合には判定が見送られることもあります。
定時決定後に随時改定が重なるケースに注意
今回のように、6月までの給与で定時決定された後、7月に昇給があると、「10月から定時決定反映」→「さらに10月から随時改定反映」という可能性が発生します。
このように、昇給タイミングによっては定時決定と随時改定が連続して適用され、保険料が短期間で二重に上がることがあります。給与担当者や労働者本人も注意が必要です。
まとめ:昇給後は3ヶ月間の給与に注意しよう
随時改定は、給与の変化を速やかに保険料に反映するための重要な制度です。昇給があった月から3ヶ月後に保険料が変更になることもあるため、制度のしくみとスケジュールをしっかり把握しておきましょう。
昇給時期や変動の内容を確認し、必要に応じて会社の担当者や社会保険労務士に相談することで、トラブルや無駄な負担を避けることができます。
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