年金制度に関する議論の中で「基礎年金の底上げ」という言葉を耳にすることがありますが、その具体的な意味や背景については意外と知られていません。この記事では、基礎年金の底上げとは何か、その目的や影響、そして現在の議論の動向について詳しく解説します。
基礎年金の底上げとは?
基礎年金の底上げとは、国民年金(基礎年金)の給付水準を引き上げることを指します。これは、将来的に低年金に陥ることを防ぐ目的で検討されている制度改革の一環です。特に、自営業者や非正規労働者など、厚生年金に加入していない人々の老後の生活を支えるために重要な施策とされています。
具体的には、厚生年金の積立金を基礎年金の給付に振り替えることで、基礎年金の給付水準を引き上げる案が検討されています。これにより、国民年金受給者の生活保障を強化することが期待されています。
なぜ基礎年金の底上げが必要なのか?
現在の年金制度では、物価や賃金の上昇率に応じて年金額を調整する「マクロ経済スライド」が導入されています。しかし、厚生年金は2026年度にも減額措置を終える見込みである一方、基礎年金は2057年度まで減額が続く必要があります。これは、基礎年金の財政状況が厳しいためです。
そのため、厚生年金の一部を基礎年金に振り替えることで、両者の減額措置を同時に終了させ、基礎年金の給付水準を底上げする案が検討されています。これにより、将来的な年金受給額の減少を抑えることが可能となります。
制度改革の影響と課題
基礎年金の底上げにより、将来的には年金受給額が増加することが期待されています。例えば、厚労省の試算によると、基礎年金の底上げを行った場合、会社員がもらえる年金は2040年までの間、今の制度に比べ、最大で月額7000円程度減るものの、その後は現在の制度より高い水準の受給額を維持できるとされています。
しかし、この制度改革には課題もあります。厚生年金の積立金を基礎年金に振り替えることに対して、厚生年金加入者からは「自分たちの年金が減るのではないか」という懸念の声が上がっています。また、追加の国庫負担も必要となるため、財源の確保が課題となっています。
現在の議論の動向
2025年5月現在、基礎年金の底上げを含む年金制度改革法案が国会で審議されています。立憲民主党や国民民主党などの野党は、基礎年金の底上げを盛り込んだ修正案を提出していますが、与党との協議は難航しています。
また、厚生労働省は、基礎年金の底上げ策を法案から削除し、今後の財政検証や経済情勢を踏まえて改めて判断する方針を示しています。これにより、基礎年金の底上げは事実上の先送りとなっています。
まとめ
基礎年金の底上げは、将来的な年金受給額の減少を抑え、老後の生活保障を強化するための重要な施策です。しかし、財源の確保や制度改革に対する理解の促進など、解決すべき課題も多くあります。今後の国会での議論や政府の方針に注目し、制度改革の動向を注視していくことが求められます。
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