うつ病などの精神疾患により、職場を離れざるを得ないことは決して珍しいことではありません。とくに転職後に再び休職を検討する際、「再度傷病手当金はもらえるのか?」「前職での受給歴は新しい職場に知られるのか?」などの疑問や不安が生まれがちです。この記事では、傷病手当金の支給期間のルールや、現職に過去の受給歴が伝わる可能性などについて詳しく解説します。
傷病手当金の「支給期間」は通算で1年6カ月
傷病手当金の支給には「支給開始日から通算で1年6カ月」という上限があります。この「1年6カ月」は、会社を退職したり、新たに入社して保険が切り替わった場合でもリセットされず、初回の支給開始日からカウントされ続けます。
たとえば、前職で2023年7月に支給開始されていた場合、最終的な支給可能期間は2025年1月まで。新しい会社で再度うつ病による休職が必要になっても、この期間内であれば残りの支給日数のみ受給できる可能性がありますが、既に1年6カ月経過している場合は、たとえ別の会社でも再支給はされません。
再支給を受けられるケースとは?
同じ傷病(例:うつ病)による休職の場合、「支給開始日から1年6カ月以内であるかどうか」が判断のカギになります。
- 同一の傷病での再申請で、まだ1年6カ月以内であれば残日数分支給可
- 1年6カ月を超えていれば、たとえ再発でも支給対象外
ただし、「新たな傷病」や「同じ傷病でも十分な治癒期間を経て再発した」と判断されるケースでは、医師の診断書等をもとに新たな支給期間が認められる可能性もゼロではありません(判断は保険者次第)。
申請書の初診日記入欄から前職の受給歴はバレる?
傷病手当金の申請書には、医師が記入する「初診日」「傷病名」の欄があります。ここに前職での受診日が記載されれば、事務担当者が「以前からの持病である」と気づく可能性はあります。
ただし、現職の人事や上司に医療情報が伝えられることは基本的にありません。個人情報保護の観点から、医師や健保組合、事務担当者以外に漏れることはないとされています。
うつ病と傷病手当金:再申請の注意点
精神疾患のケースでは、「完治」と「再発」の線引きが非常に重要になります。再度受給を検討する際は、以下の点を意識しておくとよいでしょう。
- 前回の支給終了後にある程度の就労期間があるか
- 医師の診断書で「再発」ではなく「新たな傷病」と記載されているか
- 健保組合への相談時に、状況を正確に伝えること
また、社会保険の切り替え直後は「加入期間不足」で支給対象外となるケースもあるため、加入から継続して1年以上経過しているかの確認も必要です。
今後の対策と心のケアの重要性
うつ病による休職や転職は、身体だけでなく精神的な負担も大きいものです。以下のようなサポートを活用するのもおすすめです。
- 厚労省こころの健康相談統一ダイヤルなどの公的支援
- 企業の産業医やEAP(従業員支援プログラム)制度
- 定期的なカウンセリング
心身のケアを最優先し、制度を上手に活用することで、無理なく社会復帰を目指せる環境づくりを整えていきましょう。
まとめ:制度の正しい理解と専門家への相談がカギ
うつ病による休職と傷病手当金の受給には、「支給期間」「病歴」「再発認定」といった複雑な要素が絡みます。まずは1年6カ月の通算期間と前回の初診日を確認すること。そして「新たな傷病」として認められるかどうかは、医師と保険者との連携が重要です。
ご自身の安心のためにも、加入している健康保険組合へ早めに相談し、申請時に必要な書類や記載方法について確認しておくことをおすすめします。
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