相続財産の名義が異なる場合の相続税の取り扱いと対策ポイント

税金

相続は突然発生する可能性があり、財産の名義や登記状況によって相続手続きや税金の負担が大きく左右されることもあります。特に、不動産と金融資産の名義が異なるケースでは、相続税の計算や手続きに注意が必要です。この記事では、家族構成や名義の異なる財産がある場合における相続の基本と注意点を解説します。

財産の名義ごとに相続は独立して発生する

相続税の課税対象は、被相続人が亡くなった時点で所有していた全ての財産です。つまり、不動産の名義が父親、金融資産の名義が妹である場合、それぞれの死亡に応じて個別に相続が発生し、相続税もその都度計算されます。

例えば、30年前に亡くなった父親名義の不動産については、当時の相続人(おそらく母親と子供たち)が既に相続する権利を持っていたことになります。もしそのまま名義変更が行われていなければ、相続登記が未了の状態となっており、相続手続きを進める必要があります。

妹名義の金融資産は妹が亡くなった時点で課税対象に

妹が亡くなった場合、妹名義の金融資産(たとえば4000万円)は、妹の相続財産として扱われます。相続人がAさんのみであれば、Aさんが全額を相続する形になり、妹の死亡を起点とする相続税が発生します。

この場合、課税対象額は妹の全財産を合算して判断され、相続税の基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超える部分に課税されます。たとえば、Aさん一人が相続人であれば基礎控除は3600万円なので、残り400万円に課税される計算になります。

相続税は「誰から相続するか」で課税される

相続税の考え方は「誰の財産を受け取ったか」が基本です。したがって、不動産が父親の名義、金融資産が妹名義であれば、それぞれの死亡を起点として別個に相続が発生し、一括して課税されることはありません

しかし、相続の未登記や未手続きのまま次の相続が発生すると、法的手続きが複雑になり、相続関係が錯綜する可能性があります。早めの相続登記や金融機関への届出が重要です。

相続登記を放置しているとどうなるか

父親の名義のまま放置された不動産については、令和6年4月から「相続登記の義務化」が施行され、3年以内の登記が義務付けられています。怠ると10万円以下の過料が科される可能性もあります。

登記をせずに次の相続(たとえば妹の死亡)が発生した場合、父→母→妹→Aさんという連続した相続を一度に処理する必要が生じ、遺産分割協議書や戸籍の収集が煩雑になるため、早期の対応が望まれます。

専門家への相談がスムーズな解決の鍵

相続人が1人であっても、財産の種類や名義が分かれていると相続手続きは複雑化します。特に、不動産の評価や金融資産の解約には専門知識が必要な場面もあります。税理士や司法書士といった専門家に相談することで、節税対策や円滑な名義変更が可能となります。

また、税務署に確認することで相続税の簡易シミュレーションを受けることも可能です。

まとめ:名義ごとに相続が発生し、それぞれ課税対象になる

今回のように、不動産と金融資産の名義が異なる場合でも、それぞれの名義人の死亡を起点として個別に相続が発生し、それぞれについて相続税が課税されます。一括して計算されるわけではありませんが、名義が古いまま放置されていると、手続きが煩雑になりトラブルに発展するリスクがあります。

早めに現状を整理し、必要に応じて専門家の助けを得ながら、相続登記と財産の名義整理を進めておくことが、安心した相続対策の第一歩となるでしょう。

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