熟年離婚が増えるなかで、将来の生活設計に大きく影響するのが「年金分割」です。特に、配偶者が会社員から自営業へ転身していた場合、どの期間の年金が分割の対象になるのか不安に感じる方も多いでしょう。この記事では、厚生年金と国民年金の違いや、分割対象期間の考え方を具体的に解説します。
年金分割の対象は「厚生年金期間」のみ
年金分割の対象となるのは、原則として厚生年金保険の標準報酬部分です。つまり、会社員や公務員として働いていた期間に限って、年金分割が適用されます。
一方、自営業者やフリーランスなどが加入する国民年金(第1号被保険者)の期間は、分割の対象外です。これは、国民年金が定額保険料であり、報酬に基づいた年金額の増減がないためです。
婚姻中に会社員だった期間が分割対象になる
たとえば、夫が婚姻期間中に会社員として厚生年金に加入していた場合、その期間の年金記録は分割の対象になります。今回のケースのように、5年前に自営業へ転身して国民年金に切り替えたとしても、それ以前の厚生年金加入期間が婚姻中であれば、しっかり分割対象に含まれます。
仮に夫が20年間厚生年金に加入し、そのうち15年が婚姻期間と重なっていれば、その15年分に相当する厚生年金の標準報酬部分が分割対象です。
年金分割の手続きに必要なステップ
年金分割を行うためには、以下のような手順が必要です。
- ① 離婚前後に「年金分割の情報通知書」を年金事務所で取得
- ② 離婚が成立したあと、「年金分割の申請書」を提出
- ③ 合意分割の場合は公正証書や調停調書などが必要
申請期限は離婚成立から2年以内ですので、忘れずに期限内に手続きする必要があります。
合意分割と3号分割の違いに注意
年金分割には大きく分けて2種類あります。
- 合意分割:当事者が合意した割合で分割(最大50%)。婚姻中に会社員だった配偶者の厚生年金が対象。
- 3号分割:専業主婦(第3号被保険者)だった期間が対象で、申請すれば自動的に50%分割される。
3号分割は、2008年4月以降の記録に限定されており、それ以前の分割は合意が必要です。
分割後の受給額に影響はあるのか
分割後に受け取る年金額は、自身の年金額に上乗せされる形になります。実際に年金を受け取れるのは、原則として65歳からですが、分割しておくことで将来の受給額が確保されます。
注意点として、分割によって元配偶者の年金額が減ることにはなりますが、それは法律に基づいた制度であり、不公平ではありません。
まとめ:自営業期間は対象外でも、会社員時代の年金は分割可能
離婚時の年金分割では、元配偶者が自営業になっていたとしても、婚姻期間中の厚生年金加入期間があれば、その分は分割の対象になります。国民年金期間は対象外ですが、会社員だった時代の記録をもとに適切に分割請求を行いましょう。
不安な場合は、最寄りの年金事務所や弁護士、社会保険労務士への相談も検討してください。将来の生活の備えとして、手続きをしっかりと行うことが大切です。
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