個人事業主になると避けて通れないのが「国民健康保険料」の支払いです。特に初年度は仕組みがわからず戸惑うことが多いですが、基本の構造を理解すれば不安はグッと減ります。この記事では、所得の計算や控除の扱い、保険料の算定根拠などを具体的に解説します。
国民健康保険料は「所得」ベースで計算される
まず前提として、国民健康保険料は前年の所得を基に算出されます。したがって、事業を始めた年の収入に基づく保険料は、翌年に反映されます。
ここでの「所得」とは、売上(報酬)から経費を引いた額であり、「事業所得」に該当します。
控除は国保の計算にどう関係するか
国民健康保険料の算定では、課税所得ではなく、「総所得」=事業所得の合計が用いられます。つまり、青色申告特別控除や基礎控除、医療費控除などの所得控除は、所得税や住民税の計算には影響しますが、国保の計算には基本的に反映されません。
そのため、青色控除65万円や基礎控除48万円を引いた「課税所得」が小さくなっても、国保の金額はあまり変わらないというケースも起こり得ます。
国民健康保険料の内訳と計算式
国保料は、以下の3つの要素で構成されています。
- ① 所得割:総所得 × 所得割率(例:7~10%程度)
- ② 均等割:加入者1人ごとに一定額
- ③ 平等割:1世帯ごとに一定額
例えば、事業所得が300万円で世帯人数2人、平等割が3万円、均等割が1人あたり1.2万円、所得割が8%だとすると、以下のように試算されます。
項目 | 金額 |
---|---|
所得割 | 300万円 × 8% = 24万円 |
均等割 | 1.2万円 × 2人 = 2.4万円 |
平等割 | 3万円 |
合計 | 29.4万円 |
※具体的な料率や上限は自治体によって異なるため、市区町村の公式サイトでの確認をおすすめします。
国保料が高いと感じる理由
国民健康保険は、所得控除が少なく、扶養制度がないため、会社員の健康保険よりも保険料が高く感じられる傾向にあります。また、年収に対して保険料の割合が高くなるケースも多いため「国保は高い」と言われることが多いのです。
特に、収入が増えた年の翌年には、想像以上の保険料請求が来ることもあるため、注意が必要です。
節税対策や軽減制度を活用しよう
国保料の軽減制度には、所得に応じた「均等割・平等割の軽減措置」や、退職・廃業後の「減免申請」などがあります。市区町村に申請すれば、最大7割軽減されるケースもあります。
また、事業経費を正しく計上したり、小規模企業共済・iDeCoを活用して課税所得を減らすことで、間接的に翌年の国保料を下げることが可能です。
まとめ:国民健康保険の正しい理解が節税・安心に繋がる
国保料の計算は、「売上 − 経費」の所得に対して課されることが基本で、所得控除は影響しにくいという点がポイントです。事業開始1年目はまだ請求がないものの、翌年の金額を見て驚かないよう、今から理解を深め、シミュレーションしておくことが大切です。
不安がある場合は、市役所や税理士に相談し、自分に合った制度や対策を活用していきましょう。
コメント