損益通算と退職所得の関係|なぜ分離課税でも通算対象になるのか?FP試験対策にも有効な考え方

税金

損益通算において、分離課税である退職所得に他の所得区分の損失が反映されることに疑問を抱く方は少なくありません。特にFP試験では、その理屈や税制上の背景を理解することが重要です。本記事では、なぜ退職所得と他の所得を合わせて計算する場合があるのか、損益通算のルールと共に解説します。

損益通算とは?その基本的な仕組み

損益通算とは、赤字(損失)が出た所得と黒字(利益)のある所得を相殺して、課税所得を減らすことができる制度です。通常は「総合課税に属する所得同士」でのみ通算可能ですが、一部例外があります。

たとえば、不動産所得の赤字がある場合には、それを給与所得と通算することで課税所得を減らせます。ただし、生活に直接関係のない赤字(たとえば株式取引の損失など)は、他の所得と通算できないケースもあります。

退職所得はなぜ通算計算に出てくるのか?

退職所得は原則として分離課税です。そのため、基本的には他の所得と通算できません。しかし、FP試験などでは「所得金額の計算」そのものを求める問題があり、損益通算した後の合計所得金額を用いて退職所得との関係を見るケースがあります。

この合計所得金額は、「課税総所得金額」とは異なり、純粋な所得の合計値を求めるための概念であり、実際の課税の仕組みと異なる計算が用いられることもあります。

FP試験での損益通算の出題パターン

FP1級や2級では、「第一次通算」「第二次通算」「第三次通算」といった段階的な計算が登場します。この流れは下記の通りです。

  • 第一次通算:不動産・事業・山林所得など総合課税対象間の損益通算
  • 第二次通算:株式譲渡などの一部金融所得に限られる
  • 第三次通算:一部例外的に、分離課税所得も含めた総合値計算で利用される(※所得金額計算の目的の場合)

実際に課税される金額とは別の「所得総額の集計」として、退職所得が最終的に引かれる形で提示されることがあります。

計算上の通算であって、課税処理ではない

FP試験で登場する「退職所得から他の赤字を差し引いた結果138万円」といった形式は、課税所得の金額ではなく「所得金額」そのものの合計値を出すための計算例であることに注意が必要です。

実務では、退職所得は分離課税され、他の所得とは切り離して税額が計算されます。従って、試験問題の解答で通算されているように見える場合は、純粋な集計上の表現と理解することが大切です。

なぜこのような計算が必要なのか?

この種の「総所得金額の把握」は、たとえば所得控除の適用判定や、児童手当・保育料・公営住宅の審査など、行政上の判定基準として使われることがあります。

FP試験でも、「実際の税額計算」よりも「所得金額の取り扱いや構造を理解しているか」を問う意図で出題されることが多く、実務と試験との違いに注意する必要があります。

まとめ:通算計算の目的は課税額の確定ではない

退職所得は基本的に他の所得と損益通算できませんが、FP試験では計算問題上の便宜として通算された結果を求められることがあります。これは「課税所得の計算」ではなく、「所得金額の合計値」を把握するためのものであり、実務の処理とは異なると認識することが重要です。

学習上は、出題の文脈に応じて「何を求めているのか」に着目し、柔軟に判断できるようにすることが合格への近道です。

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