傷病手当金を受給中に退職・異動を検討する際の注意点とベストな進め方

社会保険

傷病手当金を受給しながら復職・退職・再就職を検討するケースは、実は珍しくありません。特に、復職には同部署復帰や医師の意見書提出、産業医との面談が必要となる場合、慎重に段階を踏む必要があります。この記事では、受給権を維持しながら最適な判断を行うためのポイントと手順を、実例を交えてわかりやすく解説します。

傷病手当金の基本と受給継続条件

傷病手当金は、健康保険に加入している被保険者が病気やケガで働けなくなった場合に、最長1年6ヶ月間支給される制度です。

受給には以下の条件があります。

  • 業務外の事由による病気・ケガであること
  • 労務不能であること(医師の証明が必要)
  • 4日以上仕事を休んでいること(待機期間)
  • 給与の支払いがない、または一定額未満であること

退職後も労務不能が継続していれば、被保険者期間中に発生した傷病についての手当金は受給可能です。ただし、再就職が決まったり、働ける状態と判断された場合は打ち切りになります。

復職=「労務可能」と見なされるリスク

復職には医師による「就労可能」の診断書(意見書)の提出が必要となる場合が多く、これを提出した時点で、保険者から「労務不能が解消された」と判断され、傷病手当金の支給が止まる可能性があります。

仮にその後、復職が叶わずに退職を選んだとしても、「医師が就労可能と判断した」証拠が残ってしまうため、退職後に傷病手当金を継続して受け取ることは難しくなります。

復職・異動・退職を検討する際の注意点

復職してから異動交渉を行うという段取りは、傷病手当金受給者にとってはリスクが高い選択です。以下のような流れを取ると、損をしにくくなります。

  • 医師と相談のうえ、「就労可能」ではなく「一部制限付き就労可」などの文言で診断書を調整
  • 会社の人事・産業医と、異動前提の復職が可能か事前に擦り合わせ
  • 退職を選ぶ場合は、「労務不能」の状態を医師が継続的に証明できるか確認

重要:医師の意見書を一度でも「就労可能」として提出すると、退職後に傷病手当金の継続申請が非常に困難になります。

退職後も傷病手当金を継続して受給するには

退職後に傷病手当金の残期間を利用して求職活動をしたい場合、以下の条件を満たしておく必要があります。

  • 退職時点で「労務不能」の状態が継続している(医師の証明あり)
  • 健康保険の資格喪失後も「継続給付」を申請すること

この場合、退職日までに必要な診断書や勤務先による証明書(事業主記入欄)をそろえておくことが大切です。

例: Gさん(46歳)は、異動を条件に復職を打診されたが、医師が「フルタイム勤務は不可」と判断したため、退職を決意。退職後も医師の証明に基づき、傷病手当金を継続受給しながら再就職活動を行った。

最も安全な進め方とは?

もし「異動が前提なら復職も検討したい」と考えている場合は、次のような対応がおすすめです。

  • まずは会社と「異動可能性があるか」を非公式に相談
  • 医師には「部分的労務可能」の範囲での復職可能性を記載してもらう
  • 傷病手当金の継続を希望する場合は、復職確定前に診断書を出さない
  • 退職を視野に入れるなら、退職時点まで「労務不能」の証明を維持

また、職場の産業医や人事との面談前には、意図を明確にし、「復職・異動・退職」のそれぞれの可能性について選択肢を保ったまま進めると良いでしょう。

まとめ:復職前の診断書がカギ。選択肢を絞らない工夫を

傷病手当金を受給中の復職・異動・退職は、書類提出のタイミングや内容次第で大きな差が生まれます。特に医師の「就労可能」とする診断書は、手当継続の鍵となる重要な要素です。

最善の方法は、会社と医師の両方と丁寧に話し合いながら、自分にとって最も納得できるキャリアの選択ができるように段取りを調整することです。焦らず冷静に、状況を整理しながら進めましょう。

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