財産分与や離婚時の財産整理を考える際に、「これは結婚前からの自分の財産(=特有財産)だ」と主張することは重要です。とくに結婚後に開設・使用された銀行口座が、果たして特有財産として認められるかどうかは、多くの方にとって関心の高い問題です。今回は、その証明方法と判断基準について解説します。
特有財産とは何か?
特有財産とは、民法762条に基づき「婚姻前から有していた財産」や「婚姻中に自己の名で得た贈与・相続などの財産」を指します。つまり、夫婦の共有財産(共有財産=実質的な夫婦の収入)とは明確に区別されます。
特有財産にあたる主な例としては以下のものがあります。
- 結婚前に持っていた預金や不動産
- 親からの相続で得た財産
- 贈与契約で取得した財産(結婚後も可)
こうした財産は、明確に出所が証明できれば、離婚時でも分与対象とはなりません。
銀行口座が特有財産と認められる条件
質問のように「結婚後に使用されている銀行口座」に関しては、以下のような条件を満たせば特有財産と認められる可能性があります。
- 結婚前から開設・使用されている口座である
- 結婚後にその口座へ「給与収入など夫婦共有の収入」が振り込まれていない
- 入金の出所が、特有財産(相続・贈与など)であることが通帳履歴などで明らか
このように「給与収入がない」ことは一つの要素ですが、それだけでは完全な証明とはなりません。出所の明確な証明が必要です。
具体的な証明方法とは?
実際に特有財産と認められるためには、次のような書類や証拠の提示が求められます。
- 通帳の履歴(婚姻前からのものを含む)
- 贈与契約書や遺産分割協議書などの相続関連資料
- 婚姻日がわかる戸籍謄本との整合性
たとえば「結婚前に300万円入金された通帳があり、それ以降は給与振込などが一切ない」という状態であれば、かなり有力な特有財産の証明となります。
特有財産か否かでトラブルになるケース
よくあるトラブルとしては、以下のようなケースがあります。
- 結婚後も個人名義の口座を使い続けており、給与も振り込まれていた
- 現金で出所不明な入金が多く、資金の由来が不透明
- 配偶者に黙って預金をしていたため、不信感を招く
このような場合は、たとえ一部に特有財産が含まれていても、全体として共有財産とみなされる可能性があります。専門家の助言を得ながら早めに整理しておくことが大切です。
専門家への相談も検討を
特有財産の証明は、法的な専門知識が求められる分野です。家庭裁判所の判断基準や、弁護士の経験によって結果が変わる場合もあるため、可能であれば「離婚問題に強い弁護士」への相談を検討しましょう。
また、相手方との認識のズレを防ぐためにも、あらかじめ夫婦で財産リストを作成し、共通の理解を持っておくことが理想的です。
まとめ:特有財産として認められるには証明と準備が鍵
「口座に給与収入がない=特有財産」とは一概に言い切れませんが、証明の材料としては重要な要素です。通帳の履歴や財産の出所が明確であることが、最も信頼される判断材料となります。
将来のトラブルを避けるためにも、今からでも記録を整理し、必要に応じて専門家の力を借りて対策を進めましょう。
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