夫婦の間であっても、大きな金額を一方の名義から他方へ移す際には税務上の注意が必要です。特に預金を移し替えて定期預金などを行う場合、形式と実質によっては贈与とみなされることがあります。
贈与税とは?夫婦間でも適用されるのか
贈与税は、個人が他の個人から財産をもらった場合にかかる税金です。夫婦であっても、名義が変わり、対価なく財産が移動したとみなされると、贈与税の課税対象となります。
たとえば、夫名義の預金から1000万円を妻名義の口座へ移し、そのまま定期預金とした場合、税務署はそれを「贈与」と見なす可能性があります。
年間110万円までの非課税枠
贈与税には年間110万円の基礎控除があります。つまり、一人から年間110万円以内の贈与であれば、原則として申告も課税も不要です。しかし、1000万円はこの非課税枠を大きく超えるため、申告義務と納税義務が発生します。
贈与税は累進課税で、金額が大きいほど税率も高くなります。1000万円の贈与であれば、税率は30%(控除額90万円)となるケースが一般的です。
名義預金に要注意
「妻の名義で預金したから贈与ではない」と思っても、実際の資金源が夫であり、妻が自由に使えないなどの実態があれば、それは名義預金とみなされ、夫の財産と判断されることもあります。
また、贈与税の回避を目的とした形式的な名義変更も、税務調査で否認されることがあります。
贈与税を避けるには?「配偶者控除」の活用
婚姻期間が20年以上の夫婦であれば、「配偶者控除」を利用することで、2,000万円までの居住用不動産またはその取得資金を無税で贈与することができますが、これは不動産に限った話であり、現金には適用されません。
したがって、現金の移動については年間110万円を超えないように分割贈与する、もしくは専門家に相談して贈与契約書を作成するなどの方法を検討する必要があります。
実例:1000万円を妻に贈与したケース
ある夫婦が、夫の口座から妻の口座へ1000万円を移し、妻名義で投資信託を購入しました。税務署から贈与の事実を問われた際、贈与契約書がなかったため、贈与税の課税対象となりました。
一方、別のケースでは、毎年110万円以下の贈与を10年間継続し、合法的に贈与税を回避した例もあります。計画的に行えば、税負担を軽減できます。
まとめ:専門家の助言が重要
夫婦間でも名義を変更すれば贈与税が課税される可能性があります。特に大きな金額を一度に移動する際は、税理士やファイナンシャルプランナーに相談し、贈与契約書の作成や贈与税の申告を適切に行いましょう。知らずに贈与を行った結果、高額な追徴課税を受けるリスクを避けることが大切です。
コメント