特定技能などで来日して働く外国人労働者が、社会保険料を給与から引かれているにもかかわらず、保険証が交付されていないという事態が現実に起きています。このような不適切な労務管理は、労働者本人だけでなく、受け入れ企業や派遣元の信頼を大きく損なう問題です。この記事では、社会保険未加入の実態、企業側の義務、そして通報先や対応方法について解説します。
社会保険とは?加入が義務付けられる条件
日本では、一定の条件を満たす労働者に対して厚生年金保険・健康保険・雇用保険・労災保険への加入が義務付けられています。外国人であっても労働時間・日数・雇用形態が条件を満たせば、日本人と同様に保険加入の対象となります。
とくに正社員や週30時間以上働く外国人労働者は、派遣であっても社会保険加入義務があります。雇用主が手続きを怠れば、法令違反となる可能性が高いです。
保険料だけ引かれて手続きされていない場合の問題
給与から社会保険料を天引きしておきながら、実際に保険への加入手続きをしていない場合、それは違法行為です。労働者は保険証を持てず、医療費の自己負担が100%になり、将来の年金受給もできなくなる恐れがあります。
これは「預かった保険料を着服している」状況にもなりかねず、悪質な場合は労基署や年金事務所からの是正勧告や刑事罰が課されることもあります。
通報・相談できる窓口はどこ?
問題のある企業に対しては、以下の公的機関に通報または相談が可能です。
- 日本年金機構(社会保険加入手続きの確認)
- 労働基準監督署(違法な労務管理への対応)
- 外国人技能実習機構(OTIT)(技能実習や特定技能に関する問題全般)
- 出入国在留管理庁(在留資格に関する問題)
匿名での通報も可能で、本人でなくても「第三者」として助けを求めることができます。
実際の対応の流れとポイント
まずは本人から勤務先に「保険証の交付時期」や「社会保険手続きの進捗」を確認するのが第一歩です。それでも不明瞭な回答しか得られない場合、公的機関への相談が必要です。
通報する際には、次のような情報があると対応がスムーズになります。
- 会社名、所在地、代表者名
- 本人の氏名、在留資格、雇用開始日
- 給与明細(保険料が差し引かれている証拠)
労基署や年金事務所などは実地調査や是正指導を行い、企業に対して適正な対応を促します。
外国人労働者を守るために、周囲のサポートが重要
特定技能などで働く外国人は制度に不慣れで、自分の権利を主張できないケースが多くあります。だからこそ、職場の上司や同僚、日本人スタッフが正しい知識を持ち、困っている外国人を守る役割を果たすことが重要です。
また、監理団体や登録支援機関も、労働者の権利が守られているかを監督する義務があります。不審な点がある場合は、速やかに情報共有することが求められます。
まとめ:社会保険未加入の疑いは放置せず、速やかに相談・通報を
社会保険料の天引きがあるにもかかわらず保険証が交付されないというのは、労働法上の重大な問題です。本人に代わって行動することは「人として当然の助け」であり、法的にも認められた行動です。
該当する公的機関に証拠をもとに相談し、早期に是正を図ることが、外国人労働者の生活と権利を守る第一歩です。
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