厚生年金の仕組みと運用益の使い道を徹底解説|「もとが取れる」は本当か?

年金

年金制度は多くの人にとって関心の高いテーマですが、仕組みが複雑なため誤解も少なくありません。「厚生年金は会社が半分払ってくれる」「10年で元が取れる」「年金機構は運用益を出しているのに受給額は増えない」といった疑問をお持ちの方も多いでしょう。本記事では、厚生年金の構造や財源の運用実態についてわかりやすく解説します。

厚生年金と国民年金の違いと負担構造

厚生年金は会社員や公務員が加入する年金制度で、国民年金(基礎年金)に上乗せされる形で支給されます。保険料は労使折半で、会社が半分を負担する仕組みです。

例えば、月額保険料が6万円の場合、労働者は3万円、企業が3万円を負担します。これにより、個人負担だけで見ると「もとが取りやすい」と感じられる仕組みになっています。

「10年で元が取れる」は正しいのか?

仮に総支払額が1,200万円(個人負担分のみ)で、年金受給額が年間120万円なら、10年で元が取れるという試算は一見正しく見えます。しかしこれは極めて単純化されたモデルです。

実際はインフレ調整や平均余命、再分配効果、扶養者の加算などの要素が加わり、個人差が大きくなります。また、企業が支払った分を含めれば、回収にかかる年数は約20年程度が目安です。

年金制度は「積立方式」ではなく「賦課方式」

現在の日本の年金制度は「現役世代が高齢者を支える賦課方式」を採用しています。これは、納めた保険料がそのまま将来の自分の年金になる積立方式とは異なり、毎年の支払が現役から高齢者へと即時に再分配される仕組みです。

このため、年金財政の健全性は将来の労働人口や出生率に大きく左右されます。現役世代が減少すればするほど、一人当たりの負担が増加し、制度維持に課題が出る構造です。

年金積立金の運用益とその使い道

年金の積立金は主にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)によって運用されており、2023年度末時点で累積利益は100兆円を超えています。

この運用益は一見「受給額に還元されるべき」と思われがちですが、実際には将来の給付を安定化させるための「財政のバッファー」として活用されています。人口減少や景気変動への備えとしてプールされ、短期的な受給増加に直接使われることはありません。

今の年金制度で将来の給付はどうなる?

厚生労働省は「マクロ経済スライド」と呼ばれる仕組みを導入しており、少子高齢化の影響を加味して自動的に給付水準を調整する制度が動いています。これにより、制度破綻を防ぎながらも、長期的には給付額が抑制される傾向にあります。

つまり、運用益があるからといって即座に年金額が上がるわけではなく、財政の長寿命化と安定性の確保を優先しているのです。

まとめ:厚生年金は「損得」より「社会制度」として理解を

・厚生年金は企業の負担があるため、個人の元本回収期間は短めに見える。
・年金制度は「現役世代が支える仕組み」であり、貯金のように自分の払いが将来返ってくるとは限らない。
・年金の運用益は将来への備えに使われており、受給額に直接反映されるわけではない。

「もとが取れるかどうか」ではなく、社会全体で高齢者を支える制度という視点で年金を捉えることが、これからの時代にはより重要になるでしょう。

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