ハーフタックスプランの変額保険を退職時に名義変更する場合の課税・買取資金の取り扱いとは?

生命保険

法人が契約者となる変額保険(いわゆるハーフタックスプラン)は、退職金の積立手段として有効な一方、退職時に契約者名義を個人へ変更(現物支給)する際には、税務上の処理や「買取資金」が必要かどうかの判断に迷う場面が多くあります。本記事では、契約の背景や税法の解釈に基づいて、実務上の考え方を解説します。

変額保険を現物支給する場合の一般的な構造

今回のケースでは、契約形態は以下の通りです。

  • 契約者:法人
  • 被保険者:従業員
  • 満期保険金受取人:法人
  • 死亡保険金受取人:従業員の家族

保険期間は80歳まで、退職は65歳で予定されています。この保険契約を解約せず、名義変更により従業員個人へ現物支給する場合、その契約には時価が存在するため、法人→個人への移転時には税務上の「資産の移転」として取り扱われます。

名義変更時に買取資金は必要か?

まず原則論として、法人が契約者のまま退職時に従業員へ保険契約を譲渡した場合、法人からの“給付”として扱われるため、従業員にとっては退職所得課税の対象となります。

この際、個人から法人へ買取資金(例:解約返戻金相当額)を支払う必要は基本的にありません。この譲渡は“退職金の一部を保険契約という現物で支払う”と解釈されるからです。

法人側は、その契約にかかる返戻金相当額を「退職金」として損金計上し、従業員はその相当額を「退職所得」として申告します。

税務上の評価額=解約返戻金

名義変更時の評価額は、基本的に保険会社が発行する「契約移転時点の解約返戻金」や「譲渡価額通知書」を基準に判断されます。

変額保険の場合、運用実績により返戻金が変動するため、保険会社へ事前に時価評価の確認を依頼することが重要です。

評価額が100万円を超えるような高額であれば、税務署からの照会や証明提出が必要になる可能性もあるため、会計処理とともに税理士への相談も必須です。

従業員が法人に買取資金を支払うケースは?

原則的には買取の必要はありませんが、以下のようなケースではあえて「買取」という形式をとることで課税上の影響をコントロールすることもあります。

  • 退職金ではなく“給与”と判断されるリスクがある場合
  • 退職金枠を超える給付が発生し、退職所得控除を超過する場合
  • 現物譲渡を避け、契約を完全に切り離したい意図がある場合

このような状況では、個人が法人に返戻金相当額を支払い、形式的に“契約を買い取った”とすることで課税処理を整理することが可能です。

実務で注意したい処理フロー

現物支給による名義変更を行う場合、以下のステップをおすすめします。

  1. 保険会社へ譲渡手続きの依頼、返戻金評価額の取得
  2. 法人:譲渡日を基準に退職金処理(評価額分を損金処理)
  3. 個人:退職所得申告(退職所得控除の活用)
  4. 必要に応じて譲渡契約書を作成(実務証憑)

なお、税務署や第三者からの説明責任に備えて、名義変更日・評価額・契約変更通知などの控えは必ず保管しましょう。

まとめ

変額保険を法人から個人へ退職時に現物支給(名義変更)する場合、個人が法人に「買取資金」を支払う必要は原則としてありません。法人側が退職金として評価額相当を損金処理し、個人は退職所得課税を受ける形で処理されます。

ただし、税務判断や評価額の妥当性に応じて、形式的に買取処理を行うケースもありますので、実務では保険会社と税理士と連携して対応することをおすすめします。

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