年金と預金で老後を過ごす生活設計は多くの人にとって現実的な課題です。とくに3000万円というまとまった預金があっても、物価の上昇や医療費の負担増を考えると不安は尽きません。この記事では、65歳から年金生活に入った場合に本当に安心して暮らせるのか、長生きリスクとどう向き合うべきか、そして何歳まで働く選択肢があるのかを解説していきます。
3000万円の老後資金は十分か?
まず前提として、老後資金3000万円は厚生労働省や金融庁が示す「ゆとりある老後生活費」の目安に照らしても、十分な金額に見えます。ただしこれは“今の物価水準”を基準にしたものです。
仮に月25万円(夫婦2人)を支出するとして、年300万円。年金が月15万円ある場合、年間180万円が年金、差額120万円を預金から補うと、3000万円で25年分、つまり90歳まで対応可能な計算です。
物価上昇・インフレリスクの影響
しかし現実にはインフレや医療費の上昇が避けられません。2%のインフレが続けば、10年後には支出額は約1.22倍に。つまり25万円が30万円に近づくことになります。
これにより、当初は25年持つと想定した預金が20年程度で尽きる計算になりかねません。老後生活が長期化する今、想定より長生きすることによる「長生きリスク」に備える必要があります。
医療費・介護費用の備え
高齢になるにつれ、医療費や介護費の負担が増える可能性があります。後期高齢者医療制度では一定以上の所得があると自己負担が2割〜3割となり、長期入院や介護施設の利用が必要になれば、年間数十万円〜数百万円の出費も現実的です。
例えば認知症対応型の介護施設に入所する場合、月15〜30万円の負担が見込まれるケースも。預金を計画的に活用しつつ、公的介護保険制度や民間保険の活用も視野に入れておきましょう。
老後も働く選択肢とメリット
近年では「セミリタイア」や「マイルド就労」など、完全リタイアせずに週2〜3日、軽労働や趣味を活かした収入源を持つ人も増えています。例えば65歳以降も月5万円程度の収入があると、預金の取り崩しを抑えることができ、資金寿命を10年以上延ばせるケースもあります。
実例として、週3回のパート勤務で月6万円の収入がある70代女性のケースでは、「社会とつながりを持ちながらお金の不安も和らいだ」と語っています。
資産運用によるリスクヘッジ
3000万円をただ預金しておくだけではインフレリスクに対して無防備です。リスクを抑えた投資信託や債券、つみたてNISAやiDeCoなどで資産の一部を運用することで、長期的な資金寿命を延ばす工夫も検討すべきです。
安全志向なら利回り1〜2%のローリスク資産に一部振り分けるだけでも、年間数十万円の運用益が見込める可能性があります。
まとめ:安心老後のための「複合的な備え」が鍵
・3000万円+年金は心強いが、物価・医療費の上昇に備えが必要
・長生きリスクを見据えた就労延長や資産運用が現実的な選択肢
・完全リタイアではなく「ゆるく働く」「計画的に使う」ことが将来の安心につながる
老後の不安を減らす最大のコツは「ひとつの収入源だけに頼らない」こと。安心と自由を両立させる人生設計を、今から始めてみてはいかがでしょうか。
コメント