70歳到達者の算定基礎届と報酬月額の違いについて詳しく解説

社会保険

従業員が70歳に到達した場合、社会保険に関する取り扱いは一部変更となります。特に「算定基礎届」の提出時期や報酬月額の算出方法、健康保険と厚生年金での等級の違いなど、混乱しやすい点が多くあります。この記事では、70歳到達時の算定基礎にまつわる実務的なポイントを整理して解説します。

70歳到達による厚生年金の「被保険者資格喪失」

厚生年金保険は原則として70歳になる月の前月末で資格を喪失します。たとえば5月中に70歳になる方であれば、5月末をもって被保険者資格喪失となります。

そのため、厚生年金においては6月以降は保険料の納付義務がなくなり、算定基礎届の提出対象にもなりません。ただし、70歳到達以降も「70歳以上被用者」として「報酬月額の届出(70歳以上被用者該当届)」が必要なケースがあります。

健康保険の算定基礎届は通常どおり必要

一方、健康保険に関しては年齢にかかわらず加入が継続されるため、70歳以降であっても算定基礎届を毎年提出する必要があります。

健康保険の報酬月額は4月〜6月の給与の平均で計算され、通常どおり等級に反映されます。たとえば、平均月額が180,000円であれば、その額に応じた保険料が算出されます。

厚生年金だけ等級が変わる?その理由

質問のケースでは、厚生年金の報酬月額が6月のみ(190,000円)で判定されており、健康保険と等級がずれてしまうという問題が発生しています。これは、厚生年金の報酬月額が最終月分で決定されることによるものです。

5月末で70歳となり資格喪失した場合、6月の報酬は「70歳以上被用者」として届出対象となり、その月の報酬額で等級が決まるため、健康保険との間にずれが生じるのです。

実例:70歳に到達した社員の算定処理の違い

例:5月10日生まれの社員Aさん
・5月中に70歳到達 → 厚生年金資格喪失日:5月31日
・6月からは「70歳以上被用者」として報酬月額届提出
・健康保険は4月〜6月の平均で180,000円 → 健保等級据え置き
・6月の給与190,000円 → 厚生年金では1等級上昇して届出

このように、制度上、両制度のタイミングと計算方法が異なることで報酬月額や等級に違いが出るのは自然な結果です。

厚生年金を引かれないから報酬月額の違いは問題ない?

はい、問題ありません。70歳以上では厚生年金保険料の納付義務がないため、等級が1つ上がったとしても保険料負担は発生しません。報酬月額届は将来的な年金受給額の計算や記録保持のために行うものです。

つまり、厚生年金保険料を納付しない70歳以上では「等級が上がっても保険料は変わらない」ため、実務上の負担や問題はありません。

まとめ:健康保険と厚生年金の算定は別物と理解しよう

70歳に到達した従業員の保険手続きにおいては、健康保険と厚生年金で算定の基準と取り扱いが異なることをしっかり理解しておく必要があります。

  • 健康保険は70歳以降も算定基礎届が必要
  • 厚生年金は資格喪失後も「70歳以上被用者」として報酬月額の届出が必要
  • 報酬月額や等級がずれても実務上は問題ない

年齢到達に伴う制度の変化に柔軟に対応することで、正確な手続きと従業員対応が可能になります。

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