親と同居している方にとって、親を扶養に入れることでどのような税制上・社会保障上のメリットやデメリットが生じるのかは非常に気になるところです。特に年収400万円前後の現役世代が、高齢の親(年金収入あり)を扶養に入れた場合、所得税が安くなるのか、医療費はどうなるのかなど複雑な点も多くあります。本記事では税務・保険の両面から扶養に関する注意点を詳しく解説します。
扶養に入れると所得税は安くなるのか?
親を扶養に入れることで受けられる主な税制上のメリットは、「扶養控除」です。以下のような条件を満たすと、所得税および住民税の軽減が受けられます。
- 同一生計である
- 年間の所得が48万円以下(公的年金等控除後)
- 16歳以上(親はもちろん該当)
たとえば、遺族年金は非課税扱いとなるため、母親が遺族年金のみで他に課税所得がない場合、48万円以下の所得と見なされ扶養控除の対象になります。
この場合、70歳以上の親で同居しているなら、「同居老親等」に該当し、所得税:58万円、住民税:45万円の控除が適用されます。
扶養に入れると医療費や介護保険料は増える?
一方、税金の控除メリットがある一方で、社会保険上の扶養に入れることによる影響にも注意が必要です。
親が現在「国民健康保険(国保)」に加入している場合、所得の申告内容や世帯構成により、保険料が決まります。もし親が単独で保険料を支払っている場合、扶養に入れて世帯が一体化すると、子の所得が合算されて計算されるため、保険料が高くなることがあります。
特に医療費そのものは大きく変わりませんが、介護保険料や後期高齢者医療制度における保険料に影響を及ぼす可能性があります。
「税の扶養」と「社会保険の扶養」は別物
混同されやすい点ですが、「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」は制度がまったく異なります。
区分 | 要件 | 主な影響 |
---|---|---|
税法上の扶養 | 年間所得48万円以下等 | 所得税・住民税が軽減される |
社会保険の扶養 | 年間収入130万円未満かつ同居等 | 保険料免除、ただし条件によっては不利な場合あり |
たとえば税法上の扶養に母を入れても、社会保険(健康保険)では親はそのまま国保に加入し続けることも可能です。逆に親を社会保険の被扶養者にすると、本人が加入している健康保険制度に応じて医療負担が変化します。
実際のシミュレーション:年収400万円の場合
仮にあなたの年収が400万円で、母親を扶養に入れた場合の所得税軽減額は以下の通りです(簡易計算)。
- 課税所得:約250万円程度
- 扶養控除(同居老親):58万円
- 適用後の税率(10%):約5.8万円の所得税が軽減
住民税でも4.5万円の軽減が見込めるため、合計で約10万円程度の税負担が軽くなる可能性があります。
ただし、これによって国民健康保険料が年3~4万円上がるケースもあり、差し引きで節約効果が薄れることもあるため、自治体の保険課に問い合わせて事前試算してもらうのが確実です。
結論:扶養に入れる前に“両面”での試算を
親を税法上の扶養に入れることで所得税・住民税が減る可能性がありますが、保険料が増えるケースもあるため一概に「得」とは言い切れません。
特に社会保険料の影響は自治体ごとに異なるため、事前に住んでいる市区町村の国保窓口で確認を取りつつ、年末調整や確定申告時には扶養控除の申告を忘れないようにしましょう。
まとめ:高齢の親の扶養は「税」「保険」両方の影響を見て判断を
扶養に入れるかどうかの判断は、単に所得税だけでなく、国民健康保険料や介護保険料の影響も含めて検討することが重要です。特に高齢の親を持つ40代~50代の方にとっては、扶養控除の恩恵と社会保険料の増加のバランスを見極めることが家計管理のカギになります。
迷ったときは、税理士やFP(ファイナンシャルプランナー)への相談も有効です。
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