長期休職中に支給される傷病手当金。とくに休職が1年以上に及ぶ場合、「標準報酬月額はどう扱われるのか?」「直近12か月が無給だったら支給額はゼロになるの?」といった疑問を持つ方も多いでしょう。本記事では、標準報酬月額と傷病手当金の算定ルールについて、わかりやすく解説します。
傷病手当金の算定に使われる標準報酬月額とは
傷病手当金は、健康保険の被保険者が病気やけがで働けなくなったとき、給与の代わりに支給される給付です。支給額の計算には「標準報酬月額」が使われます。
この標準報酬月額とは、健康保険において保険料や給付の基準となる月額報酬の等級のことを指します。給与明細には記載されていませんが、会社や年金事務所で確認できます。
直近12か月間の給与がゼロでも問題ない理由
「休職が1年以上続き、その間の給与がゼロだった」という場合でも、標準報酬月額は「休職前の等級」が原則維持されます。つまり、傷病手当金の計算に用いる金額がゼロになることは基本的にありません。
これは、健康保険制度が、被保険者の在職中の報酬をもとに継続的な給付を行う制度だからです。ただし、休職中に会社との雇用契約が終了した場合は別扱いになります。
休職前の給与が反映される仕組み
傷病手当金の支給額は、原則として休職開始前12か月間の「標準報酬月額の平均」をもとに日額を算出します。休職直前の12か月に給与の支払いがなければ、次のように計算方法が切り替わります。
- ①被保険期間が12か月以上:直近12か月の平均等級で算出
- ②12か月未満や例外的事情:支給開始月の前月の標準報酬月額をもとに計算
このため、たとえ1年以上無給でも、休職前の報酬が記録されていれば、その金額が基準となります。
実例:1年4か月の休職でも支給されたケース
たとえば、ある会社員Aさんは、うつ病により2023年4月から休職し、翌年8月まで傷病手当金を受給しました。Aさんの給与は2023年3月を最後に停止されていましたが、休職前の標準報酬月額32万円が基準となり、支給日額が計算されました。
このように、休職期間中に給与がゼロであっても、資格喪失していなければ過去の報酬が支給額に反映されるのです。
注意点:退職や資格喪失時の取り扱い
休職中に退職すると、傷病手当金の支給は継続される場合と終了する場合があります。継続受給できる主な条件は次の通りです。
- 退職時点で傷病手当金の支給を受けていたこと
- 退職後も引き続き労務不能状態であること
- 健康保険の任意継続被保険者ではないこと(任意継続者には傷病手当金なし)
退職後は「任意継続保険」ではなく、「継続給付」として支給されます。支給額は原則として、退職直前の標準報酬月額が適用されます。
まとめ
休職が長期にわたり、直近12か月の給与がゼロであっても、傷病手当金の算定においては休職開始前の標準報酬月額が使われるため、支給額がゼロになることは原則ありません。
ただし、退職した場合や保険資格を喪失した場合は例外もあるため、会社や健保組合、あるいは社会保険労務士に早めに相談しておくことをおすすめします。
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