相続の場面で「ローンの残った不動産を相続したら、相続税はどうなるのか?」と疑問に思う方は少なくありません。特にアパート経営など収益物件を保有している場合、ローン残高・固定資産税・賃料収入など、様々な要素が絡んできます。本記事では、ローン付きアパートを相続した場合の相続税計算や、控除制度のポイント、想定される相続税総額の目安まで詳しく解説します。
アパート相続時の相続税評価額とは
相続税の計算では、不動産の「時価」ではなく「相続税評価額」が用いられます。アパートなどの貸家建付地や貸付建物は、以下のように評価されます。
- 土地部分:路線価方式や倍率方式で算出し、貸家建付地として一定の減額(借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
- 建物部分:固定資産税評価額×(1-借家権割合)
このため、実勢価格より2〜3割以上低い金額で評価されるケースもあります。
ローンが残っている場合の扱い
ローンが残っている不動産は「債務控除」の対象となります。つまり、被相続人(故人)が残していた債務は相続財産の総額から控除できるのです。
たとえば、アパートの相続税評価額が5,000万円、ローン残高が7,000万円であれば、アパートに関連する純資産はマイナス2,000万円となり、相続税評価額には加算されません。
具体的なシミュレーション:今回の事例
本件のケースでは、相続財産は以下のように見積もられます(すべて概算)。
- 預金(銀行+証券)=約4,200万円
- アパートの相続税評価額=仮に5,000万円(建物+土地で時価より減額評価)
- アパートローン残高=▲7,000万円(債務控除)
- 自宅=仮に2,000万円(小規模宅地等の特例で8割評価減適用と仮定)→評価額400万円
相続財産の合計:4,200万(現預金)+5,000万(不動産)-7,000万(ローン)+400万(自宅)=2,600万円
法定相続人が2人(配偶者と子)なので、基礎控除は3,000万円+600万円×2人=3,600万円。したがって、相続税は非課税になる可能性が高いと考えられます。
注意点:相続後の家賃収入と債務返済
アパートを相続した後は、毎月の家賃収入が発生しますが、同時にローンの返済義務も引き継ぐことになります。ローンを含む負債ごと相続するか否かは「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3つの選択肢から選べます。
相続開始後3か月以内に選択をしないと、原則として単純承認(すべて相続)とみなされますので注意が必要です。
不動産相続に関わる節税制度も活用を
相続時には、以下のような節税制度が活用できます。
- 小規模宅地等の特例(居住用なら80%減額)
- 配偶者の税額軽減(法定相続分または1億6,000万円まで非課税)
- 債務控除(住宅ローン、未払税金など)
これらの制度を正しく活用すれば、相続税がゼロまたは最小限に抑えられることも珍しくありません。
まとめ:ローン付きアパートでも適切な評価と控除で節税可能
ローンが残っているアパートの相続では、評価額から債務控除が行われるため、必ずしも高額な相続税が課されるわけではありません。また、法定控除や特例の適用によって、多くのケースで相続税はゼロまたは低額で済む可能性があります。
相続の詳細な税額や最適な遺産分割方法を知るためには、税理士など専門家への早めの相談がおすすめです。正確な評価と制度の理解が、後悔しない相続を実現する鍵となります。
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