2022年から段階的に適用されている年金改革により、いわゆる「106万円の壁」が実質的に撤廃され、短時間労働者にとっても厚生年金の加入が義務化されるケースが増えています。本記事では、週20時間労働を基準とした新たな加入要件と、それによる影響についてわかりやすく解説します。
厚生年金加入の対象が拡大された背景
厚生年金の加入対象が広がった背景には、高齢化による年金財政の安定化と、非正規労働者の老後保障を充実させる目的があります。これまでは週30時間以上の勤務が加入要件でしたが、現在は以下の5つの条件をすべて満たす場合、厚生年金への加入が必要です。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上
- 勤務期間が2か月超の見込み
- 学生でない
- 従業員101人以上の企業(2024年10月からは51人以上)
この条件に該当するパートやアルバイトも、原則として厚生年金と健康保険に加入する義務があります。
週20時間未満なら加入義務はなし?
この制度設計により、「週20時間未満なら加入しなくて済むのでは?」と考える方も少なくありません。実際、勤務時間が明確に20時間を下回るように調整すれば、現行制度上は加入義務は発生しません。
たとえば、週5日勤務で1日4時間(合計20時間)の契約だった場合、1日1分ずつ早く退勤して1日3時間59分にすれば、週合計19時間55分となり、形式上は加入要件を満たさなくなる可能性があります。
注意すべきは「実態」と「形式」のズレ
しかし、形式的に19時間59分にしても、実際の労働実態が週20時間を超えていれば、年金機構や労働基準監督署から指摘を受けるリスクがあります。
また、会社側が故意に加入回避のために契約変更する行為も、法的には問題となる可能性があり、労使双方の責任が問われる場合もあります。
厚生年金に加入すると本当に損なのか?
短期的には、手取りが数千円~1万円程度減少する可能性はありますが、将来的な年金受給額の上乗せや、障害年金・遺族年金などの保障も充実します。
特に国民年金(基礎年金)のみの老後生活はかなり厳しいため、厚生年金を通じて上乗せ部分があることは長期的に見ると重要です。しかも保険料は労使折半であり、全額自己負担の国民年金よりもコストパフォーマンスが高いといえます。
会社との相談と対応策の検討
制度変更により、不本意に加入対象となってしまう場合は、勤務時間や給与の調整を会社と相談することも可能です。ただし、労務管理の観点からも、「形だけの調整」は避けるのが無難です。
勤務形態の見直しや、生活設計とのバランスを考慮して、長期的な視点で判断することが推奨されます。
まとめ:新制度を理解し、働き方を主体的に選択しよう
厚生年金の適用拡大は、短期的には手取り減少というデメリットがありますが、長期的な老後保障を強化する制度改革でもあります。週20時間未満に調整することで加入を回避することは制度上は可能ですが、実態に基づいた対応が求められます。
働く時間や所得、将来のライフプランを踏まえ、自分にとって最善の選択をするためにも、制度への正確な理解が欠かせません。
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