DC年金受取時の退職所得控除と5年ルール|再就職や早期退職後の控除額の取り扱いを徹底解説

税金、年金

確定拠出年金(DC年金)を受け取るタイミングで気になるのが「退職所得控除」を最大限活用できるかどうかです。特に、早期退職などで一度退職金控除を受けた方が、数年後にDC年金を一時金で受け取ろうとする場合、「5年ルール」の適用が可能かどうかで課税額が大きく変わる可能性があります。この記事では、退職所得控除の基礎、5年ルールの内容、控除額の再適用の条件、そして再就職を挟んだ場合の控除年数の数え方まで、具体的に解説します。

退職所得控除とは何か?

退職所得控除とは、退職金や企業年金を一時金として受け取る際に、所得税・住民税の課税対象を軽減するための特別な控除です。勤続年数に応じて控除額が増えるため、長く働いた人ほど控除額が大きくなる仕組みです。

控除額の目安は以下の通りです。

  • 勤続20年以下:40万円×勤続年数(最低でも80万円)
  • 勤続20年超:800万円+70万円×(勤続年数-20年)

例えば、勤続32年の場合の控除額は 800万円+70万円×12年=1,640万円となります。

5年ルールとは?再度退職所得控除を使える条件

「5年ルール」とは、同一人が退職金などで退職所得控除を利用した後、次の一時金受け取りまでに5年以上経過していれば、再び退職所得控除が適用できるという税制上の仕組みです。

ただし、これには条件があります。5年のカウントは「前回の退職所得が発生した年の翌年1月1日から」始まります。たとえば、55歳で退職し同年に一時金を受け取った場合、翌年1月1日から5年間、つまり60歳以降であれば新たな退職所得控除を受けられる可能性があります。

再就職後にDC年金を受け取る場合の年数カウント

再就職した場合、その期間も退職所得控除の勤続年数として加算できます。つまり、前職32年+再就職5年で、合計37年分の勤続年数として控除計算が可能になる場合があります。

この場合の退職所得控除は800万円+70万円×(37-20)=1,990万円です。ただし、前職の退職金で1,640万円分の控除をすでに使用しているため、その差額分しか新たに控除できない可能性もあります。

実際の取り扱いは税務署や税理士による判断が必要であり、必ずしも全額が再度控除されるわけではありません。

一部の控除しか受けられないケースとは

たとえ5年ルールが適用されたとしても、前回の退職所得控除と今回の分が「重複している」とみなされると、全額の控除は受けられないこともあります。特に、再就職が短期間だったり、形式上は「同一勤務先の延長」扱いとされる場合は注意が必要です。

そのため、前回使用した控除対象年数(例:32年分)を差し引いた「5年分のみ」の退職所得控除(40万円×5年=200万円)のみが認められるケースもあります。

このような判断は、退職金の種類や受け取り方法、就業形態、勤務先の法人区分などによっても左右されるため、税理士への相談が非常に重要です。

実例:55歳で退職→60歳でDC年金一時金受給のケース

早期退職で32年分の控除を使用したAさんが、その後再就職し5年間勤務したのち、60歳でDC年金を一時金で受給する場合、以下2通りのシナリオが考えられます。

  • パターン1:控除は「5年分=200万円」しか認められない(32年分はすでに使ったと判断)
  • パターン2:「37年分=1,990万円」が適用されるが、すでに使った1,640万円分は差し引かれる

この判断には、税務署の見解とDC年金の支給事務担当者の書類内容が関与するため、事前確認が必須です。

まとめ:5年ルールは有効だが、個別確認がカギ

DC年金を一時金で受け取る際、5年ルールを活用して再度退職所得控除を受けられる可能性は確かにあります。ただし、「控除額が全額適用されるかどうか」や「以前の控除期間との重複の有無」については、状況によって異なります。

ご自身のケースで最大限控除を活用するには、税理士や税務署への事前相談が不可欠です。見落とすと数十万円単位の税金差になる可能性もあるため、慎重な対応をおすすめします。

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