退職タイミングと社会保険料の関係：10月以降の退職が得とされる理由とは？

退職時期をいつにするかは、税金や社会保険料の負担に影響を与えるため、慎重に検討したいポイントです。中でも「10月以降に退職すると保険料の面で得になる」という話を耳にしたことがある方も多いでしょう。この記事では、その背景にある制度の仕組みと、実際にどう判断すべきかを詳しく解説します。

社会保険料の算出方法と年間負担の考え方

社会保険料（健康保険・厚生年金保険）は、4月～6月の給与をもとに決まる「標準報酬月額」によって、その年の9月から翌年8月までの保険料が決まります。つまり、春〜初夏に高い給与を受け取っていると、その後の1年間の保険料が高くなってしまう仕組みです。

たとえば、4月から6月の給与が月30万円なら、その年の9月以降も「標準報酬月額30万円相当」で保険料が計算されます。退職してもその等級で国民健康保険などの負担が引き継がれるケースもあるため、注意が必要です。

10月退職が有利とされるのは、年末調整や保険料徴収のスケジュールに絡んで、給与・賞与の支給回数が減り、結果として所得税や社会保険料の年間合計が下がる可能性があるためです。

また、10月は多くの企業で下期が始まるタイミングであり、職場の人事異動や退職の受け入れ態勢が整いやすいというメリットもあります。

退職後の社会保険料で見落としがちなのが「任意継続制度」です。これは、退職後も最長2年間、元の会社の健康保険を個人で継続できる制度ですが、保険料は全額自己負担（会社負担分も含む）になるため高額になる場合があります。

一方、住民票のある自治体の国民健康保険へ加入すると、前年所得ベースで計算され、退職後すぐは保険料が高くなる傾向にあります。そのため、「10月以降に退職し、年末まで任意継続を利用し、翌年から国保に切り替える」などの戦略が有効です。

退職金が支給される場合は、その金額に応じて所得税や住民税が変動します。退職所得控除が適用されるとはいえ、退職の月によって翌年の住民税額に影響が出る可能性もあるため、計画的な対応が重要です。

さらに、翌年に雇用保険の失業給付を受け取る場合、それが「収入」として扱われることはありませんが、扶養の条件などには関わることがあります。

仮に給与が高めで社会保険料が重い場合、「4〜6月の給与額を意識して調整し、9月末または10月以降に退職する」ことで、翌年度の負担軽減を図れます。

一方で、退職が急を要する場合や、転職などのスケジュールが決まっている場合は、無理に10月を待つ必要はありません。重要なのは「制度を知ったうえで自分に合った選択をすること」です。

10月以降の退職が得と言われる背景には、社会保険料の計算方法や年末調整との関係があります。特に保険料を抑えたい人は、4〜6月の収入を調整したり、任意継続や国保の切り替え時期を検討したりすることで、年間負担を軽減できます。

最適な退職時期は人それぞれです。可能であれば税理士や社労士など専門家にも相談し、自分にとって最もメリットのある選択を見つけましょう。